センターラインのない生活道路や狭い道では、車同士のすれ違い時にミラーが接触するなどの軽微な事故が発生しやすいものです。特に、歩行者や自転車を避けるために進路を変えた際、思わぬ接触が起こることも。本記事では、こうした状況での過失割合の考え方と、モラルや交通ルールを踏まえた対処法を解説します。
センターラインのない道路の通行ルールとは
道路交通法では、センターラインがない場合でも「道路の中央を通行しなければならない」と定められています(道路交通法第18条第1項)。一方で、車両同士が対向してきた場合は、互いに徐行または停止し、安全にすれ違えるよう努めなければなりません。
また、障害物(歩行者や電柱等)がある側の車両は、進路妨害とならないように優先権を譲るべきとされています。これはあくまで「通行の円滑化」に向けた実務上のマナーや判例に基づく対応です。
接触事故の典型例と過失割合の考え方
今回のような事例(狭い道で歩行者を避けた対向車とミラー接触)は、実務上「狭路すれ違い事故」と分類されます。この場合、基本的な過失割合はお互いに50:50(五分五分)からのスタートになることが多いです。
ただし、以下のような要素によって修正されることがあります。
- 歩行者や障害物の有無とその位置
- 徐行義務の履行状況
- どちらかが道幅に余裕のある場所で待機できたか
- 速度や運転態度(ブレーキ操作・安全確認の有無など)
過去の判例と保険実務に見る判断基準
過去の裁判例や自動車保険業界の実務では、次のような評価がされています。
たとえば、一方に明らかな障害物があり、それを避けるために対向車線に大きく出ていた場合、その車両側に過失が大きくなる傾向があります(例:70:30)。ただし、その場面で安全確認や徐行を怠った相手方にも一定の過失は認められることがほとんどです。
また、「待避所を見過ごした」「止まれる場所を通過してしまった」などの場合、それだけでは著しく不利になることはありませんが、全体の状況次第で10〜20%の過失修正が行われることがあります。
モラルと交通ルールの違いに注意
「障害物がある側が止まるべき」「道を譲るのがマナー」といった考え方は多くの運転者が持つ共通認識ですが、これは法律で明文化された義務ではありません。したがって、あくまでモラルや実務判断として評価されるにとどまり、事故責任において絶対的な要素とはなりません。
つまり、「自分が道を譲ったから過失ゼロ」とはならず、「譲らなかったから全責任」ともならないのが実情です。
保険会社の交渉と示談の流れ
事故後、双方が任意保険に加入している場合は、それぞれの保険会社が代理で交渉を行い、最終的な過失割合を決定します。この際、実況見分調書・写真・ドライブレコーダー映像が重要な証拠となります。
相手方が主張している「止まるべきだった」という点についても、映像や現場状況によって評価されるため、感情的に受け取らず事実ベースで冷静に対処しましょう。
まとめ:すれ違い事故は「お互い様」が基本、状況証拠で判断が分かれる
センターラインのない道路での接触事故では、双方に注意義務があり、基本的にはお互いに一定の過失が認められるケースが大半です。歩行者を避けた結果の接触であっても、それだけで一方に全責任があるとは限らず、現場状況と証拠に基づいた判断が重視されます。
相手の主張が強くても、正しい証拠と説明をもとに交渉を進めることが大切です。困った場合は、弁護士特約を利用して専門家に相談するのも選択肢の一つです。