従業員が会社のガソリンカードを私的に使っていないか――そんな疑念が生じた際、防犯カメラを確認したいと思うのは自然なことです。しかし、個人がガソリンスタンドのカメラ映像を直接見せてもらえるかどうかには、法律と運用上の制限があります。
防犯カメラ映像の開示は原則“第三者不可”
ガソリンスタンドに設置されている防犯カメラの映像は、防犯目的・店舗管理目的で運用されています。プライバシー保護の観点から、第三者(一般の個人や会社関係者)が直接映像を閲覧することは原則できません。
たとえ会社のカードが関与していても、防犯映像の開示には「捜査機関からの正式な照会」または「本人の同意」が必要です。
不正利用が疑われる場合の正しい対応手順
疑わしい利用が判明した場合は、まず以下の手順で社内調査を進めるのが適切です。
- 利用明細の確認(カード会社からの月次報告書)
- 従業員の勤務記録・運行記録との照合
- 日時・利用額・給油スタンドの特定
これらをもとに、客観的な疑いの根拠が揃えば、本人へのヒアリングや懲戒手続きに進む前段階として、法的に正当な対応を検討できます。
警察や弁護士を通じて映像確認が可能になるケース
企業として「業務上横領や背任の可能性がある」と判断した場合、警察への相談や被害届の提出を行えば、捜査機関を通じてガソリンスタンドから映像の提供を受けられる場合があります。
また、弁護士名での文書照会(任意開示請求)により映像の提供を受ける事例も存在しますが、必ずしも応じてもらえるとは限らず、店舗判断に委ねられます。
事前に確認しておきたい社内規定と契約内容
ガソリンカードの管理運用規定や就業規則、またカード会社との契約書には、利用目的・制限・違反時の対応について記載されているはずです。
この規定が曖昧な場合は、後々の調査・処分に支障が出るため、事前にルールを明文化しておくことが再発防止の観点からも重要です。
実例:調査から発覚までの流れ(企業A社の場合)
A社では、ある従業員の給油履歴が休日や私有車使用時と一致していることから不審を持ち、運行日報との整合をチェック。本人ヒアリングの後、証拠不足で処分は行わなかったが、その後カード利用管理をIC認証付きに更新しました。
このように、再発防止策の整備が最も重要視される対応の一つです。
まとめ:防犯カメラよりも証拠固めと手順が鍵
・防犯カメラは個人が直接見ることはできず、法的手続きが必要
・カード利用履歴と勤務情報を突き合わせて内部調査
・証拠が明確であれば、弁護士や警察を通じて映像提供も可能
・社内規定の整備・周知が不正防止の第一歩
疑念が生じた場合も、冷静なプロセスと法的根拠に基づく調査を心がけましょう。