新築住宅の購入後、数年を経てから突然「請求漏れがあった」との連絡が来ると、不安や疑問を抱くのは当然です。特に住宅ローン返済中で家計に影響する場合、支払義務の有無を明確にしておくことは重要です。本記事では、請求漏れの法的効力や支払い義務の有無について、実例や法律の観点から解説します。
そもそも「請求書の組み込み忘れ」とは何か
ハウスメーカーなどが、契約時点で工事や資材の一部費用を請求書に含め忘れていたケースがあります。このような請求は、顧客との契約内容に盛り込まれていないことが多く、あとから発覚した場合にトラブルとなります。
たとえば、追加で設置した設備費用を営業担当が見積書に反映し忘れたケースなどが典型的です。しかし、請求がなされなかったからといって、常に支払い義務が免除されるわけではありません。
民法上の時効とその例外
日本の民法では、債権(請求権)の時効は原則5年間(商取引など一部は3年間)です。ただし、この期間は「債権を行使できると知った時」から進行します。今回のように、請求忘れが最近発覚した場合、債権の時効がスタートしていなかった可能性もあります。
一方で、相手が3年以上何の通知もしていなかった場合は「信義則違反」や「権利の濫用」として、請求の正当性が否定されることもあります。
書面上の契約内容がすべての基準となる
契約書や最終見積書にその費用項目が記載されていない限り、基本的に支払義務はありません。重要なのは「口約束ではなく書面に基づく証拠の有無」です。
支払い義務を認めるには、以下のような書類が必要です。
- 契約書の明確な明記
- 納品書や工事報告書
- 発注書や注文書などの依頼履歴
もしこれらが存在せず、請求内容が不明瞭な場合は、支払いに応じる必要は基本的にありません。
営業担当のミスによる請求でも責任を問われる?
営業担当者の過失(忘れや誤記)によって発生した請求漏れについて、法的には会社側の責任となります。顧客に非がない場合は、請求が妥当かどうか再検証されるべきです。
特に契約時にすべての支払い手続きを担当者立ち会いのもと行っていたのであれば、「支払いが完了したとの合理的信頼」が成立している可能性もあります。
対応方法:まずは請求内容の詳細を確認
まずは「いつ、何について、どのような契約に基づき」請求されているのか、文書で詳細を請求しましょう。電話や口頭ではなく、必ず証拠が残る書面やメールでのやり取りを行ってください。
不明点がある場合は、法テラスや弁護士に相談して、支払義務の有無を明確にするのがベストです。強引に支払いを求められる場合は、弁護士からの通知で対応することも検討してください。
まとめ:納得のいかない請求には、冷静な対応を
新築後3年も経ってからの請求は、法的にも実務的にも正当性に疑問が残ります。まずは契約書類や証拠を確認し、自分に支払い義務が本当にあるかを第三者(弁護士等)の目で確認することが重要です。
営業担当の「忘れ」や「ミス」が原因である場合は、支払いを拒否できる可能性も十分にあります。焦らず、文書での確認と法的判断を踏まえた上で対応しましょう。