自社のネットワークを別棟へ延長しても違法?電気通信事業法とWiFi拡張の法的ポイントを解説

社内ネットワークの拡張を検討する中で、「会社の許可を得て自分で光ケーブルを延長し、別棟でもネットワークを使えるようにする」ことや、「WiFiリピーターで電波を飛ばす」ことについて、電気通信事業法などの法律に抵触するのか気になる方もいるでしょう。この記事では、これらの行為に関する法的な視点を整理します。

電気通信事業法とは何を規制する法律か

電気通信事業法は、通信を「他人の通信を媒介する業務」として提供する場合に適用される法律です。つまり、通信サービスを第三者に提供して対価を得る場合などが対象となり、単なる社内ネットワークの構築や利用は一般的に対象外です。

総務省のガイドラインでも、「自らが利用するための通信施設の設置・運用」は、電気通信事業の届け出や登録は不要とされています。

自社内での光ケーブル延長工事は違法になる?

勤務している会社の本棟から別棟へ、LANケーブルや光ケーブルを敷設してネットワークを延ばす行為は、あくまでも“自社利用”であり、他者への提供に該当しない限り電気通信事業には該当しません

ただし、次の点には注意が必要です:

  • 建物間にまたぐ配線は、電気設備技術基準や建築基準法に関連することがあるため、技術的安全性に注意が必要です。
  • 配線が公道をまたぐ場合、自治体や道路管理者の占用許可が必要となる可能性があります。

WiFiリピーターによる電波拡張はどうか

WiFiリピーターやアクセスポイントを使用して社内の電波エリアを広げることも、社内利用であれば法令上問題となることは基本的にありません

使用する機器が技適(技術基準適合)認証を受けたものであり、電波法の範囲内(無線LANの2.4GHz/5GHz帯など)で運用される限り、追加の届け出や許可は不要です。

例外的に届け出が必要となるケース

以下の場合には、電気通信事業の届け出や、別の法令上の手続きが必要になることがあります:

  • 自社のネットワーク設備を第三者企業にも提供し、業務として通信を媒介する場合
  • 賃貸ビルで共有設備としてネットワークを構築し、テナント間で通信提供を行う場合
  • マンションで共用WiFiを住民向けに運用する場合など

このような事例では、“公衆”に対する電気通信サービスとみなされる可能性があり、電気通信事業者の届け出が必要になります。

実例:中小企業のネットワーク拡張事例

ある印刷会社では、本社のサーバールームから隣接する倉庫に向けて20mのLANケーブルを敷設。ファイル共有と監視カメラの中継に使用していました。このケースは完全に社内利用であるため、法的問題はなく、社内ネットワーク整備の一環として評価されています。

一方、マンション管理会社が複数世帯にWiFiを提供する目的で、共用部にアクセスポイントを設置したケースでは、電気通信事業として届け出が必要となりました。

まとめ:社内ネットワークの拡張は基本的に合法。ただし用途と範囲には注意を

・社内で使う目的の光ケーブルやWiFi機器の設置は原則問題なし
・他社や不特定多数への通信提供であれば電気通信事業に該当
・屋外配線や安全性、技適マークの有無にも注意を
・心配な場合は総務省や専門業者への相談がおすすめ

法律を守りながら柔軟に社内ネットワークを拡張することで、業務効率を高める安全な通信環境が実現できます。

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