高齢の親の通帳やお金を子どもが代わりに管理するケースは珍しくありません。しかし、兄弟姉妹間でトラブルになることも多く、法的な注意点や運用のあり方を理解しておくことが重要です。この記事では、親と同居していない子どもが通帳を預かる場合のリスクや法的な問題点、そして適切な財産管理の方法について解説します。
家族であっても通帳の預かりは慎重に
まず大前提として、通帳や印鑑を勝手に預かって運用することは「親族間であっても」原則として他人の財産への干渉とみなされる可能性があります。本人の同意や委任がないまま通帳を管理・使用すれば、場合によっては横領や不当利得と判断されるリスクもあります。
そのため、親が明確に「この子に通帳の管理を任せる」と意思表示しているかどうかが極めて重要です。
委任がある場合とない場合の違い
親が明確に別居中の子に通帳の管理を「委任」していれば、通帳の保管や資金の出し入れは違法ではありません。実際、病気や高齢による判断能力の低下から、自分で口座管理ができず、信頼する子どもに任せるケースも増えています。
しかし、委任の意思が不明確だったり、口頭でのやり取りのみで書面がない場合は、後になって他の家族(例えば同居中の子)から「勝手にお金を動かしたのでは?」と疑いを持たれることもあります。
通帳管理におけるトラブル事例
典型的なトラブル例として、別居している兄弟姉妹の一人が通帳を預かっていたが、介護を担っていた同居の兄弟から「自分は通帳を見せてもらえない」と不信感を持たれ、最終的に遺産相続時に問題に発展するケースがあります。
また、親の認知症が進んでから預金が引き出されていた場合、「本人の意思による委任がない」とみなされ、後に成年後見人の申し立てや不当利得返還請求が発生することもあります。
通帳管理を適切に行うためのポイント
- 委任状を作成する:できれば公正証書にして、第三者にも説明可能な形を取るのが望ましい。
- 使途を記録に残す:引き出したお金の使い道を明細や家計簿などで管理し、後から説明できるようにする。
- 他の兄弟と情報を共有する:家族LINEや定期的な報告で、不信感や誤解を防ぐ。
「きょうだい間の信頼」だけでは不十分で、形式的な証拠を整えておくことが重要です。
成年後見制度の活用も視野に
本人の判断能力が不十分になってきた場合、家族の一存で通帳を管理するのはリスクが高くなります。その際には、成年後見制度や任意後見契約の活用を検討するのが適切です。
特に高額な資産運用や不動産売却を伴う場合は、法的な後見制度を活用することで、家族間トラブルや不正のリスクを未然に防ぐことができます。
まとめ:親の通帳管理は合意と記録が重要
別居している子どもが親の通帳を預かり、管理・運用すること自体に違法性はありませんが、「本人の同意と意思の明確化」「家族間の情報共有」「使途の記録」がないと、後に大きなトラブルへ発展する可能性があります。
信頼関係だけに頼るのではなく、書面や記録で裏付けを取りながら、公平性と透明性を意識した通帳管理を行うことが、家族全体の安心につながります。