近年、「デパ地下の惣菜売上が減っているのでは?」という声が増えています。実際、各地の百貨店や流通業界の動向を見ても、変化の兆しは確かに存在します。本記事では、その背景や要因、そして今後のトレンドについて詳しく解説していきます。
デパ地下惣菜市場の現状と実際のデータ
2023年から2025年にかけて、百貨店全体の売上は回復傾向にある一方で、惣菜売場に関しては苦戦する店舗が目立ってきました。特に都心部では「テレワークの常態化」により、夕方以降の集客に課題を抱えるケースが増加しています。
日本百貨店協会の統計によると、2024年後半には惣菜部門の売上前年比が一時的にマイナスに転じた時期もありました。ただしこれは一部の百貨店に限られており、地域や客層によって差がある点にも注目すべきです。
消費者の購買行動が変化した理由とは
「健康志向」や「コスパ重視」の価値観が浸透したことが、惣菜売上に影響を与えていると考えられます。とくに単身者や高齢者世帯の間では、「手作り志向」や「簡易調理の冷凍食品」への関心が高まっています。
さらに、ウーバーイーツや出前館などの宅配サービスの浸透も大きな要因です。これまで惣菜に流れていた需要の一部が、デリバリーへと移行したと見る専門家もいます。
購買のピークが分散化した影響
以前は「仕事帰りにデパ地下で買う」というスタイルが主流でしたが、リモートワークの増加により、買い物の時間帯が分散し、特定の時間に惣菜をまとめて売るという従来のモデルが機能しにくくなっています。
また、休日の昼間にはフードホールやカフェなど、惣菜とは異なる選択肢を利用する人が増え、結果的に惣菜売場のピークタイムが薄れてきています。
百貨店側の対策と今後の方向性
一部の百貨店では「健康志向メニュー」や「グルテンフリー対応」「ビーガン対応メニュー」などの導入が進んでいます。また、電子レンジで温めるだけで本格的な味が楽しめるパックメニューの充実も進められています。
さらに「ライブキッチン形式」で調理の様子を見せる演出や、アプリ連動のクーポン提供など、デジタル施策による集客強化も図られています。
実際に惣菜を買わなくなった人の声
ある30代の女性会社員は「以前は仕事帰りに惣菜を買っていたが、最近は物価高で自炊するようになった」と話します。また、60代の男性は「味付けが濃すぎて、健康を考えると買わなくなった」と述べており、味の傾向や価格に対する不満も少なくないようです。
一方で、「百貨店の惣菜は質が高く、自分へのご褒美にちょうどいい」と定期的に利用している人もおり、一定の需要は根強く存在しています。
まとめ:惣菜離れは一時的?それとも構造的変化?
デパ地下の惣菜売上が減少している背景には、消費者の価値観やライフスタイルの変化が大きく関わっています。今後は、健康志向・簡便性・個人最適化といったキーワードに合わせた商品展開と、デジタルとの融合が鍵を握るといえるでしょう。
「売上減」という断片的な情報に振り回されず、今の時代に求められる形で惣菜ビジネスが再構築されつつあることに注目していきたいところです。