自宅の敷地内で家族の車と人が接触する事故が起きた場合、警察への通報義務があるのか、あるいは法的責任が問われるのか疑問に思う方は多いでしょう。道路交通法や刑法、保険の観点から、このようなケースを正しく理解しておくことが重要です。
道路交通法の適用範囲は「道路」のみ
道路交通法は原則として「道路上の交通」に適用される法律であり、自宅の敷地や私有地での事故には直接的な適用はありません。このため、敷地内で起きた接触事故については、同法に基づく警察への「報告義務」は基本的にありません。
たとえば、自宅のガレージで家族が車をバックさせた際に、同居の家族が接触してケガをしたとしても、事故現場が「道路」でなければ、道路交通法上の「事故扱い」とはなりません。
ただし重大事故の場合は刑法・民法が関係する可能性も
道路交通法が適用されないとはいえ、重傷事故や死亡事故の場合には、刑法や民法の責任が発生する可能性があります。たとえば、運転者の過失が重ければ「過失傷害罪」(刑法第209条)が適用されることも考えられます。
また、被害者が家族であっても、任意保険の対人補償対象外になることもあるため、経済的補償や保険の適用についても確認が必要です。
病院での虚偽説明は避けるべき
病院でアザやケガの原因を「階段から落ちた」と虚偽説明することは、一時的にトラブルを避ける方法に見えるかもしれません。しかし、医療機関が傷の状態に違和感を持った場合、虐待やDVなどの疑いで通報される可能性もあります。
特に妊婦や子ども、高齢者に関わるケガでは、診断記録に基づいて医療関係者が通報義務を負うことがあるため、虚偽の説明はかえって大きなリスクを招くことがあります。
実例:家庭内での接触事故が通報に至ったケース
ある家庭では、自宅駐車場で親が車を動かした際に子どもと接触し、軽い打撲を負わせてしまったという事例がありました。親が病院で正直に事情を説明した結果、病院側も事実関係を理解し、特別な通報もありませんでした。
しかし、似たような傷の説明が曖昧だった別のケースでは、虐待が疑われて児童相談所に連絡されたという事例も報告されています。
警察に届け出るべきか判断する目安
- 軽微な接触でケガがない場合:基本的に届け出不要
- 明確なケガや出血、腫れなどがある場合:事故記録や保険申請のために届け出も検討
- 第三者(家族以外)との接触や敷地外の場合:原則通報
迷った場合は、警察や保険会社の事故相談窓口に事前に確認するのが安心です。
まとめ:事故の透明性と誠実な対応が最も重要
自宅敷地内での車と人との接触事故は、道路交通法の範囲外である場合が多く、警察への報告義務は必ずしも発生しません。しかし、事故の内容やケガの程度によっては刑事・民事責任が問われる可能性があるため、軽視せず、慎重に対応することが大切です。
誠実な対応と正確な説明を心がけることで、家族間の信頼関係や法的なトラブル回避にもつながります。疑問が残る場合は、弁護士や専門窓口に相談するのも一つの方法です。