近年、SNSや動画配信サービスにおいて道路交通法違反に関する動画が注目を集めています。特にドライブレコーダーやスマホ撮影による危険運転、信号無視、暴走行為などを取り上げたコンテンツは再生回数も伸びやすく、収益化の対象になることがあります。しかし、こうした動画を編集・投稿しお金を得る行為は法的に問題ないのでしょうか？本記事では、法的リスクと注意点、さらに倫理的側面について詳しく解説します。
道路交通法違反動画の収益化に関する法的観点
まず、道路交通法そのものには「違反行為を撮影・編集・公開することを罰する規定」は存在しません。つまり、単に違反行為を記録・公開しただけでは道路交通法違反にはなりません。
しかし、動画の内容や公開方法によっては名誉毀損罪やプライバシー侵害、肖像権の侵害といった別の法的問題に発展する可能性があります。
名誉毀損や肖像権との関係性
違反者の顔や車両ナンバーを隠さずに動画を編集・投稿すると、名誉毀損（刑法第230条）や肖像権侵害に該当する恐れがあります。たとえ事実であっても、公開によって社会的評価を不当に下げる内容であれば違法とされる可能性があります。
また、個人が特定される形での映像編集・収益化は民事上の訴訟に発展するリスクもあります。
動画制作側にも問われる可能性のある共犯・教唆・幇助のリスク
稀に、再生数を狙って意図的に違反行為を撮影させるような事例もあります。このような場合は、道路交通法違反の幇助や教唆に該当する可能性があり、刑事罰の対象となり得ます。
たとえば、違反者に指示して赤信号を無視させ、それを撮影・編集してアップロードした場合、撮影者も責任を問われる可能性が高くなります。
倫理的観点と社会的責任
動画投稿者には、法律だけでなく倫理的責任も問われます。違反行為を助長するような編集（煽るBGMや過度な煽り文句）や、繰り返し違反動画を投稿して注目を集めるようなスタイルは、公共の安全意識を損なう懸念があります。
一方で、教育的・啓発的な目的で編集された動画であれば、社会的意義も認められやすくなります。
収益化の条件と安全な投稿方法
- 違反者の顔やナンバーはモザイク・ぼかしを入れる
- ナレーションや字幕で「違反行為の危険性」を強調する
- 再発防止を目的とした編集意図を明示する
- できれば当事者の許可を得る（特に個人が明らかな場合）
これらの対応を取ることで、法的リスクを大幅に軽減できます。
まとめ：収益化は慎重に。法令と倫理の両立を意識して
道路交通法違反そのものを撮影・編集して収益化する行為は必ずしも違法ではありませんが、その方法や内容によっては名誉毀損・肖像権侵害・幇助罪に問われる可能性があるため、慎重な取り扱いが求められます。
視聴者の関心を引きつけつつも、法的・社会的に健全なコンテンツ制作を心がけましょう。