労働災害による補償制度には、治療費の補償(療養補償給付)と休業中の収入減に対する補償(休業補償給付)があります。中には、治療費は既に労災で支払われていても、休業補償はまだ請求していないという方もいます。この記事では、そうしたケースでの休業補償請求の進め方や、同時請求との違いについて詳しく解説します。
■休業補償給付とは?
労災保険の休業補償給付とは、仕事中のケガや病気によって働けなくなり、収入が減った場合に支給される制度です。原則として、労働不能が3日以上続いた場合に、4日目以降について平均賃金の80%相当が支給されます。
「治療費の支給」とは別に、休業補償は働けなかった期間に対して請求するものであるため、手続きは別に行う必要があります。
■後から休業補償を請求しても大丈夫?
はい、問題ありません。労災では療養補償と休業補償はそれぞれ個別の給付であり、請求時期が異なっても支給対象となります。ただし、請求には原則として2年の時効があるため、事故から時間が経っている場合は速やかに手続きを進めることが重要です。
書類に不備がなく、必要な医師の意見や証明も整っていれば、後からの請求でも審査にかかる時間は同時請求と大差ないとされています。
■休業補償請求の具体的な手順
主に以下のような書類が必要になります。
- 様式第8号:休業補償給付支給請求書
- 医師の意見欄の記載(就労不能期間の確認)
- 事業主の証明(休業期間と賃金不支給の確認)
すでに治療は終了している場合でも、遡って過去の休業期間に対する請求は可能です。ただし、医師の証明が必要なため、事後的な記載を依頼する手間が増えることもあります。
■同時請求と後日請求で認定スピードに差はある?
労基署での処理の優先度は案件ごとに異なるため一概には言えませんが、必要な書類が揃っていれば、同時請求でも後日請求でも支給までの期間に大きな差はないとされています。
ただし、治療期間中に定期的に診断書を提出していた場合などは、情報がすでに揃っているため、審査がスムーズになる傾向はあります。
■実際の事例と注意点
ある労働者が、骨折による労災で3か月入院したあと、通院を続けながら職場復帰したケースでは、休業補償の請求を退院後にまとめて行い、約1か月半で支給が決定したとの報告があります。事業主の協力と医師の迅速な記載が鍵になったとのことです。
一方で、事業所が協力的でなかったり、診断書の取得に時間がかかったりすると処理が遅れることもあるため、請求はなるべく早めに行うのが理想です。
■まとめ:早めの準備がスムーズな支給への鍵
治療費の認定後に休業補償を後から請求することは可能ですし、処理スピードにも大きな違いはありません。ただし、時効や書類の取得などに注意が必要です。
労働基準監督署や社会保険労務士への相談も視野に入れつつ、必要書類を早めに整えておくことで、スムーズな支給につながります。