最近、食品や日用品などで「内容量が減ったのに価格は同じ」という現象を見かけたことはありませんか?これはいわゆる「ステルス値上げ」と呼ばれる手法です。消費者の不満も多いこの現象ですが、法律的にはどうなのか、また企業側の言い分や背景も含めて掘り下げてみましょう。
ステルス値上げとは何か?
「ステルス値上げ」とは、価格を据え置いたまま、内容量や品質を目立たない形で下げることで、実質的な値上げを行う商法を指します。
たとえば、以前は150g入りだったお菓子が同じ価格で135gに変更されたり、トイレットペーパーの1ロールの長さが減っているなどが典型例です。一見すると価格が変わっていないので消費者が気づきにくいという特徴があります。
企業がステルス値上げを行う背景
企業がステルス値上げを行う背景には、原材料費や物流費の高騰、人件費の上昇など、さまざまなコスト増加の影響があります。
しかし価格に敏感な消費者心理を考慮し、あえて価格を変えずに内容量を調整することで販売維持を狙うのが主な目的です。これは「消費者が買わなくなることへの配慮」でもあるのです。
ステルス値上げは法律上の「詐欺」に該当するのか?
消費者が感じるように、「騙された」と思う気持ちは理解できますが、ステルス値上げが詐欺罪に該当する可能性は極めて低いとされています。
日本の刑法上、詐欺罪が成立するには「欺罔行為(だます行為)によって財物を交付させること」が必要です。しかし、商品ラベルに正確な内容量が表示されていれば、法的には「騙していない」と解釈されるのです。
消費者庁の見解と公正取引委員会の対応
消費者庁や公正取引委員会は、ステルス値上げが明らかな「不当表示」や「優良誤認表示」に該当する場合には、景品表示法に基づいて調査・是正指導を行うことがあります。
たとえば、「増量中」と表記しているにもかかわらず、実際は以前より内容量が減っているようなケースは問題視されることがあります。しかし、正確に表記してあれば、違法性はないというのが現状です。
消費者ができる対策と賢い買い物術
ステルス値上げに気づくためには、以下の点に注意しましょう。
- グラム数や個数を確認する習慣を持つ
- 同じ価格帯の商品を比較する
- 「コスパ」ではなく「gあたり単価」などで見る
たとえば、洗剤や食品などは外見が似ていても、リニューアル後に内容量が減っていることがあります。「新パッケージ」と書いてあるときほど要注意です。
ステルス値上げは今後どうなる?
世界的な物価上昇の流れの中、今後もステルス値上げは続くと予想されます。企業にとっては生き残るための施策でもありますが、消費者との信頼関係を損なえば長期的には逆効果にもなりえます。
近年では、あえて「価格はそのままですが、内容量を調整させていただきます」と正直に説明する企業も増えています。このような姿勢こそ、消費者の支持を集めていくでしょう。
まとめ:ステルス値上げを見抜く目と冷静な判断を
ステルス値上げは、法的には違法ではなく、詐欺罪にも該当しないことがほとんどです。しかし、消費者の信頼を損ねるリスクがある手法であることに変わりはありません。
- 企業のコスト事情を理解しつつ
- 商品の表示や内容をよく見て
- 冷静にコスパを見極める力
こうした「消費者リテラシー」が、これからの時代にますます求められています。