インターネットを通じた車の売却が一般化する中、電子契約で手続きを進めるケースが増えています。しかし、実車査定後に減額される場合や契約解除となる場合、書面が存在しないことで不安を抱く人も少なくありません。この記事では、電子契約と減額査定の仕組み、契約解除の有効性、書面の有無に関する注意点を法的観点から解説します。
電子契約の効力と成立条件
電子契約とは、紙の契約書ではなくインターネットを通じて締結される契約のことです。法的には民法に基づき、当事者の合意と意思表示が明確であれば成立するとされています。署名・押印がなくても、契約内容が確定していれば有効とみなされます。
たとえば、売買価格・引き渡し条件・減額時の取り扱いなどが明示され、双方がオンライン上で同意すれば契約は成立します。
減額査定と契約解除の条項がある場合の扱い
車の売却契約に「引き渡し当日の査定結果により金額が変更される可能性がある」旨が記載されている場合、その条項も契約の一部とみなされます。仮に実査定後に価格が下がり、売主が同意しなかった場合は、「減額を拒否=契約解除」となる仕組みが成立しています。
この場合、解除条件が契約文言に含まれていれば、別途書面を取り交わさなくても契約は解除されたと解釈されることがあります。
契約解除書面がないことのリスク
ただし、解除後にトラブルが生じた場合(たとえば「車を引き渡さなかったのに契約が有効のままになっていた」等)、契約解除が証明できないと売主に不利に働く可能性があります。特に電子契約は形として残りにくいため、メールやメッセージで「契約解除の確認」記録を残すことが重要です。
可能であれば、相手側に「解除の事実」をメールで再確認し、その返信を保管しておくとよいでしょう。
契約に有効期限がない場合の扱い
契約書に有効期限が明記されていない場合でも、通常は「契約内容が履行されるまで」が有効期間とされます。つまり、契約で予定された車の引き渡しや代金支払いがなされない限り、その契約は未履行の状態にあります。
ただし、解除条件が発動された(=減額査定で価格に合意しなかった)時点で、契約は事実上白紙に戻るため、それ以降の義務履行は不要となります。
実例:返車になったが書面がなかったケース
あるユーザーは、オンラインでの査定契約に基づき電子サインを済ませた後、実車査定により価格が減額されました。契約内容に「減額時は契約破棄も可」と記載があったため、売却を取りやめましたが、書面の解除確認は発行されず不安に。
このケースでは、業者からのメール記録とチャット履歴を保管しておくことで、後のトラブル回避につながりました。
まとめ:契約解除は書面がなくても成立するが記録の保存が必須
電子契約では、契約の合意・解除もすべて「記録」が命です。書面がないこと自体は違法ではありませんが、証拠がなければ後から「解除していない」と主張される恐れがあります。
そのため、解除の際は必ずメールやメッセージアプリなどでやり取りを残し、できれば「契約解除を確認しました」という文面を業者に発行してもらうのが安心です。オンライン時代の売買だからこそ、記録と管理が信頼のカギになります。