地震や天変地異などの予言がSNSや動画配信などで拡散され、結果として外れた場合でも、一部の人々は深い不安や混乱に陥ることがあります。では、このように恐怖を煽ったにもかかわらず、その内容が的中しなかった場合、発信者に法的責任を問うことはできるのでしょうか?
予言が外れても原則として処罰されない理由
日本の刑法では、「予言」という行為そのものに対して処罰する法律は存在しません。仮にその内容が外れたとしても、表現の自由の範囲内とされる限り、発信者が罪に問われることは基本的にありません。
たとえば、「○月○日に大地震が来る」などと断定的に言ったとしても、それが意図的に虚偽だと立証できなければ、法的責任を問うのは難しいのが現実です。
名誉毀損・業務妨害・威力業務妨害に該当する可能性
ただし、予言の内容が特定の個人や団体を中傷するものであったり、社会的な混乱を引き起こすような場合は、「名誉毀損罪」や「業務妨害罪」「威力業務妨害罪」に該当する可能性があります。
たとえば、商業施設に対して「○日にテロが起きる」と予言し、多数のキャンセルや風評被害を生じさせた場合などは、捜査や逮捕に至る事例もあります。
民事責任としての損害賠償請求
刑事責任が問えなくても、場合によっては民事責任が問われる可能性もあります。たとえば、虚偽の予言で誰かに経済的損害や精神的苦痛を与えた場合には、損害賠償請求が認められることもあります。
ただし、損害や因果関係、故意・過失の立証は非常に困難なことが多く、現実的には訴訟を起こしても勝訴するのは難しいケースが多いです。
過去の事例:予言による混乱と対応
2011年の東日本大震災後には、「○月○日に南海トラフ地震が来る」とSNSで拡散した投稿が話題になりました。しかし、投稿者が責任を問われた例はほとんどありませんでした。
一方で、虚偽の災害情報を意図的に拡散し、行政の対応や業務に支障をきたしたケースでは、警察が威力業務妨害として捜査に乗り出した事例もあります。
表現の自由とのバランス
日本国憲法では表現の自由が保障されており、予言もその一環として守られています。ただし、それが社会秩序を乱すような言動であれば、例外的に制限される可能性があります。
つまり、予言者が完全に「無敵」なわけではなく、発信の内容や影響次第では法的責任を問われることがあるという点は押さえておくべきです。
まとめ:恐怖を煽る予言への冷静な対応を
予言が的中しなくても、それだけで罪に問うことは難しいのが現実です。ただし、内容次第では刑事・民事の責任を問える場合もあります。
重要なのは、情報を見極める冷静さと、必要に応じて通報・相談する判断力です。
- 予言が外れても処罰の対象にはならない
- 内容が悪質なら刑事・民事の責任が問われることも
- 表現の自由と公共の利益のバランスが重要
無責任な予言に振り回されないためにも、信頼できる情報源を優先し、必要以上に不安を感じないよう注意しましょう。