日本の民法では、一定期間行方不明のまま生死不明となった人に対し「失踪宣告」という法的手続きにより死亡とみなされる制度が設けられています。これは遺産分割や戸籍の整理など、社会的・法律的必要性を満たすためのものです。
失踪宣告とは何か?その制度の概要
失踪宣告とは、7年以上生死不明の場合に家庭裁判所の審判により死亡とみなす制度です(民法第30条)。これにより、戸籍上でも死亡した扱いとなり、相続や婚姻解消などが可能になります。
ただし、これは自動的に成立するわけではなく、必ず家庭裁判所への申し立てが必要で、審理と確定判決を経て成立します。
死亡日とみなされる日付はいつになるのか
失踪宣告において、死亡日として法律上定められるのは以下の通りです。
- 普通失踪(災害や事故ではない通常の失踪)の場合:生死不明となってから7年が経過した日
- 特別失踪(船の沈没や戦争など危難による失踪):危難が去った時点
したがって、2025年5月10日に失踪したと届け出た場合、失踪宣告により法的な死亡日は2032年5月10日とみなされるのが原則です。
「失踪届」と「失踪宣告」の違いに注意
ここで混同しやすいのが「失踪届」と「失踪宣告」です。
- 「失踪届」は警察に提出する捜索のための届出であり、法的な死亡とは関係がありません
- 「失踪宣告」は家庭裁判所への手続きで、死亡とみなす法的効力を持つ制度です
つまり、いくら警察に失踪届を出しても、7年後に自動で死亡扱いになるわけではなく、あくまで裁判所に申し立てて初めて「死亡」として認定されます。
失踪宣告後の影響と注意点
失踪宣告が確定すると、戸籍上は死亡と記載され、相続、婚姻関係の解消、保険金の支払いなどが進められるようになります。
ただし、後日当人が生きていたと判明した場合には「失踪宣告取消の申し立て」が可能です。この場合、法律上は復活することになりますが、相続や再婚などに影響を及ぼす可能性があります。
実例:5月10日に失踪した場合の死亡日
たとえば2025年5月10日に家族が行方不明となり、その日から生死不明のまま2025年中に失踪届を出したとします。そして、2032年5月11日に失踪宣告を申し立てた場合、死亡日として扱われるのは2032年5月10日となります。
これは民法30条に明記されている通り、「7年間の生死不明期間の満了日が死亡日」とみなされるからです。
まとめ
失踪宣告による法的な死亡日は、「生死不明状態が7年経過した日」であり、警察への失踪届日ではなく、実際の行方不明になった日を基準に7年後が基準となります。
家族や関係者としては、いざというときのために家庭裁判所での申立手続きの流れと、制度の正確な意味を理解しておくことが重要です。