犯人蔵匿罪の成立要件と誤認の影響──知らなかったでは済まされるのか?

刑法における「犯人蔵匿罪」は、逃亡中の犯人を故意に匿うことにより成立する犯罪です。しかし、実際の場面では「犯人がどのような罪を犯したか」「蔵匿者がそれを知っていたか」など、判断を分ける要素が複雑に絡みます。この記事では、誤認があった場合に犯人蔵匿罪が成立するかどうかを、具体的な事例とともに解説します。

犯人蔵匿罪の法的な定義と要件

犯人蔵匿罪は、刑法第103条により「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者を、隠避させる目的で蔵匿または隠避した者」に成立すると規定されています。したがって、ポイントは「罰金以上の罪」「故意」「蔵匿行為」の3つです。

特に重要なのが「故意」です。つまり、蔵匿者が「罰金以上の刑に当たる罪を犯したこと」を認識していたかどうかが問われます。これがなければ、犯人蔵匿罪は成立しないと解釈されています。

誤認があった場合の刑事責任の考え方

質問のケースのように、Aが逃亡中のBから「スリ(窃盗)をして警察に追われている」と聞き、「科料にしかならない軽い罪だ」と誤解して蔵匿した場合はどうでしょうか。

この場合、Aが「罰金以上の刑になる犯罪を犯した者」と認識していなかったのであれば、「犯人蔵匿罪の故意がない」とされ、通常は成立しません。実際の判例でも、蔵匿者が罪の重大性を誤認していた場合に故意が認められず、無罪になった例があります。

窃盗罪の法定刑と誤認の影響

そもそもスリは刑法第235条の「窃盗罪」に該当し、10年以下の懲役または50万円以下の罰金という、れっきとした「罰金以上の刑」に該当します。ですので、スリをして逃げているBは「犯人」に該当し、匿った場合は法的には犯人蔵匿罪の対象になります。

ただし、問題はAがその事実をどう理解していたかです。Aが「窃盗=科料程度」と思い込んでいた場合、「罰金以上の罪を犯した者」との認識がなかったことになり、故意が否定されうるのです。

誤認があっても成立するケースとは

一方で、「そうは言っても、怪しいとわかっていた」「警察から逃げている状況を認識していた」など、状況的に罪の重大性を推測できたと認められる場合は、結果的に故意ありとされる可能性もあります。

たとえば、「警察に追われている」という時点で刑事事件であることを認識し、「何らかの重大な罪を犯した」と理解していたならば、誤認を主張しても通らないケースもあるのです。

犯人蔵匿罪を回避するために気をつけたいこと

誤って罪に問われないためには、誰かに「匿ってほしい」と頼まれた際、安易に受け入れず、状況を冷静に判断することが重要です。とくに、警察から逃げていると明言された場合は、法律上のトラブルに発展する可能性があるため、速やかに距離を取るべきです。

また、誤認であっても「状況的に明らかであった」と判断されれば罪に問われる場合もあるため、リスク管理が求められます。

まとめ:犯人蔵匿罪は「認識」がカギを握る

犯人蔵匿罪の成立には、「罰金以上の罪を犯したことを知っていた」という故意の有無が重要です。質問のような誤認があった場合でも、状況によっては故意とされることもあるため、一概に「知らなかったから無罪」とは言い切れません。疑わしい場面では、法律の専門家に相談することをおすすめします。

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