遺留分侵害額請求と相続財産の取捨選択:婚外子による請求は合法か?

遺留分とは、法定相続人に最低限保障された相続分のことです。公正証書遺言などで一部の相続人に全財産を相続させる旨が記載されていても、他の相続人が遺留分を侵害された場合、遺留分侵害額請求という手段によって金銭的請求が可能です。この記事では、婚外子が一部の財産のみを対象として遺留分請求を行うことが法律的に認められるのかを詳しく解説します。

遺留分の基本と対象財産の考え方

遺留分侵害額請求は、相続人に対し「具体的な財産の返還」ではなく、「金銭での補償」を求める制度です。請求者が「この財産がほしい」と選択できる仕組みではなく、遺留分に相当する金額が補填されれば足ります。

たとえば遺産総額が1,000万円で、子の法定相続分が1/4(遺留分1/8)の場合、婚外子が受け取るべき遺留分は125万円。請求先が自宅不動産であっても、相手が現金で支払えば問題ありません。

婚外子が一部財産を「不要」としても請求は可能か?

結論からいえば、婚外子が一部の財産(預貯金や8坪の土地)を「相続しない」としても、遺留分請求自体は可能です。ただし、それら財産の評価額は遺産総額に含まれるため、遺留分の計算には加味されます。

重要なのは「相続放棄」をしていないこと。遺留分請求は「相続人」でなければできないため、相続自体を放棄していれば請求権も失われます。

請求対象として特定財産を名指しすることは可能か?

遺留分侵害額請求では、基本的に「財産の明け渡し」は求められませんが、裁判や調停の場では「この不動産の価値をもとに評価した遺留分相当額を金銭で支払ってほしい」と主張することは可能です。

ただし、裁判所がそれを認めるかどうかは、遺産全体の評価や相手の資力、調整の余地によります。そのため、特定財産の名指し請求は法的な強制力を持つものではありません。

婚外子が取るべき現実的な対応とは

  • 遺産総額を明確に把握し、遺留分の具体的な金額を算出
  • 自宅不動産の評価額や他の財産とのバランスを確認
  • 交渉や調停で遺留分相当の現金支払いを求める
  • 話し合いが難航する場合、遺留分侵害額請求訴訟を検討

調停段階では柔軟な解決が可能であるため、当事者間での合意形成が期待されます。

まとめ

婚外子が遺留分を主張する場合、たとえ一部の財産を「不要」としても、遺留分相当額の金銭請求は可能です。ただし、遺産全体の評価に基づくため、すべての財産を考慮する必要があります。特定財産を名指しして請求することは可能ですが、裁判所にそのまま認められるとは限りません。弁護士など専門家と連携しつつ、調停を通じて柔軟に対応していくことが重要です。

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