契約社会において、約束を守ることは基本ですが、現実には予定通りに物事が進まないこともあります。そんなときに登場するのが「債務不履行」という言葉です。この記事では、債務不履行の基礎から「完全」と「不完全」の違い、さらに実際の例まで、法律初心者にもわかりやすく解説します。
債務不履行とは?その意味を簡単に説明
債務不履行(さいむふりこう)とは、契約や法律に基づいて果たすべき義務(債務)を履行しない、または適切に履行しなかったことを指します。たとえば、物を売る約束をしたのに渡さない、家賃を期日までに払わない、といった行為が該当します。
このとき、債務者(義務を負っている人)は責任を問われる可能性があり、債権者(義務の履行を求める側)は契約の解除や損害賠償の請求ができることになります。
「完全な債務不履行」とは?
完全な債務不履行とは、債務の履行が全くなされない場合を指します。たとえば、以下のようなケースが該当します。
- 指定された日に商品を一切納品しなかった
- 代金を支払う約束があったのに全額支払わなかった
このようなケースでは、契約が重大に違反されたとされ、債権者は契約解除や損害賠償を強く主張できます。
「不完全な債務不履行」とは?
不完全な債務不履行とは、債務の一部は履行されたが、内容に不備があったり、品質が基準に満たなかったりする場合を指します。例としては次のようなものがあります。
- 約束通りに商品は納品されたが、キズがついていた
- 契約書にある機能を満たしていない商品が納入された
このような不完全な履行でも、債務不履行に該当する可能性があり、債権者は修補(直し)を求めたり、値引きを要求したりする権利があります。
「遅延」との違いは?
債務不履行のひとつに「履行遅滞(りこうちたい)」というタイプがあります。これは約束の期日を過ぎても履行されない状態のことを指します。
たとえば、賃貸契約において家賃の支払いが1週間遅れた場合、それは履行遅滞となり、内容や回数によっては契約解除につながることもあります。完全不履行とは異なり、履行の意思があるものの期限を守れなかったというニュアンスがあります。
実際の事例で学ぶ債務不履行
たとえば、AさんがBさんにパソコンを10万円で売る契約をし、Bさんは代金を払ったにもかかわらず、Aさんが商品を送らなかった場合、これは明らかな「完全な債務不履行」となります。
一方、C社がD社に機械を納品したが、設定通りの出力性能が出なかった場合、これは「不完全な債務不履行」とされ、D社は契約の解除や損害賠償を求めることができます。
債務不履行が起きたときに取るべき行動
債務不履行が疑われるときは、まず相手方に内容を確認し、履行を求める通知を文書で出すことが基本です。そのうえで、以下のような対応が可能になります。
- 履行の催告(催促)
- 契約の解除
- 損害賠償請求
なお、契約内容や事実関係が複雑な場合は、法律の専門家に相談することをおすすめします。
まとめ:債務不履行の理解は契約トラブルの防止につながる
債務不履行とは、契約上の約束が果たされない状態を指し、「完全な履行の欠如」と「不完全な履行」に分類されます。それぞれに対する対応策や請求方法は異なり、適切に判断するには基本的な理解が不可欠です。
万が一トラブルに巻き込まれた際には、相手方とのやりとりを記録し、必要に応じて法律の専門家に相談しながら冷静に対応しましょう。