割引販売の現場では、価格表示の仕方ひとつで法律違反に問われることがあります。特に「二重価格表示」は景品表示法において注意が必要な行為です。本記事では、小売店に勤務する方が知っておくべき、二重価格表示と景品表示法違反のリスクや時効、従業員の責任範囲について解説します。
二重価格表示とは?
二重価格表示とは、「通常価格」「元の価格」などと共に割引後の価格を併記し、あたかもお得であるかのように見せる表示です。これは適正な根拠がない場合、不当表示に該当する可能性があります。
景品表示法では、実際にその通常価格で一定期間販売されていたことなど、根拠となる事実がない限り、元値の併記は違反とされる恐れがあります。例:賞味期限が近づいた加工食品を「1,000円→800円」と表示して販売していたが、直前に1,000円で実際に販売されていた期間が短い場合など。
景品表示法違反に問われるとどうなる?
景品表示法に違反した場合、主に事業者が行政処分や課徴金の対象となります。初犯であっても、措置命令や課徴金納付命令(売上の最大3%)が科されることがあります。
刑事罰としては、悪質性が高い場合に限り、懲役刑(2年以下)または罰金刑(300万円以下)が企業や経営者に科される可能性がありますが、通常の従業員が直接刑事責任を問われることはほとんどありません。
アルバイト従業員や現場スタッフの責任は?
通常、景品表示法違反に対して責任を問われるのは「事業者(会社)」です。アルバイトやパートが知らずに二重価格表示をしていた場合、従業員個人に課徴金や罰金が科されることは原則としてありません。
ただし、明らかに会社の方針に反して虚偽の価格表示を故意に行った場合や、上司からの指示があったにもかかわらず無視したような場合には、懲戒処分等の社内処分の対象となる可能性はあります。
勤務先から課徴金を請求される可能性は?
事業者に課せられた課徴金を、従業員に「賠償請求」することは法的には可能ですが、現実的には極めて稀です。労働者には過失があっても、会社がそれを管理・指導すべき立場にあるとされるため、会社が負うのが原則です。
また、「賠償予定の禁止(労働基準法第16条)」により、事前に損害賠償を取り決めるような契約も基本的に無効となります。
景品表示法違反の時効とは?
景品表示法違反の行政処分には、課徴金の納付命令は違反行為が終了した日から7年以内に通知されなければなりません(景品表示法第8条第11項)。
一方で、刑事罰に関する公訴時効は3年または5年(罰金・懲役の内容により異なる)です。つまり、基本的には5~7年が目安と考えておくと良いでしょう。
適正な割引表示を行うためのポイント
今後トラブルを避けるためには、以下のような表示ルールを守ることが大切です。
- 「通常価格」とは、直近8週間のうち過半期間販売された価格を指す
- 値引き後価格の根拠が明確でない場合は、「通常価格」や「定価」などの文言を使わない
- 「〇%OFF」表示も、ベース価格の根拠を明確にしておく
曖昧な表示は避け、必要に応じて価格表示に詳しい管理者や法務部門に確認を取りましょう。
まとめ:基本的に従業員個人の刑事責任や賠償義務は低い
知らずに二重価格表示を行ってしまった場合、会社が適切な対応をすれば重大な問題に発展することは稀です。従業員個人に課徴金や刑罰が科される可能性は非常に低く、過剰に心配する必要はありません。
ただし今後のトラブル回避のためにも、価格表示に関しては明確なルールを確認し、疑問がある場合は早めに責任者に相談しましょう。