インターネット上に匿名で名誉を傷つけるような書き込みをされた場合、「誰が書いたのか知りたい」と思うのは自然な感情です。この記事では、慰謝料請求や訴訟を目的とせず、あくまで投稿者の特定(開示)だけをしたい場合の方法や費用について、具体的に解説します。
開示請求とは?誰が・どこに・何を請求するのか
開示請求とは、ネット上に投稿された内容の投稿者を特定するために、投稿が行われたサイトの運営者やプロバイダに対して、IPアドレスや契約者情報の開示を求める手続きです。
たとえば、掲示板サイトに電話番号や卑猥な内容を書かれた場合、その投稿が行われた日時やIPアドレスをもとに、プロバイダを通じて契約者(投稿者)を特定することが可能です。
開示請求の2段階構造とその流れ
開示請求は一般的に次の2段階で進みます。
- ① 発信者情報開示請求(サイト運営者に対して)
- ② プロバイダ責任制限法に基づく開示請求(プロバイダに対して)
まず投稿先の管理者や運営会社に対し、投稿に使われたIPアドレスなどを開示請求します。その後、そのIPアドレスを管理する通信会社(プロバイダ)に対して、契約者情報を請求します。
この2段階を通して初めて、投稿者の氏名・住所などの情報が明らかになります。
費用はどのくらいかかる?慰謝料請求しない場合でも高額?
相手の特定だけを目的とする場合でも、裁判所を通す必要があるため、ある程度の費用がかかります。以下は概算です。
項目 | 目安費用 |
---|---|
弁護士費用 | 20〜40万円(着手金) |
裁判所への手数料 | 約1万円〜2万円 |
書類作成・証拠保全費用 | 数万円程度 |
合計すると、30万円前後が一般的な目安となります。訴訟や慰謝料請求まで行う場合はさらに高額になりますが、「開示のみ」であれば比較的抑えられます。
自分でできる?弁護士を使うべきかの判断基準
理論上、自分で開示請求を行うことも可能ですが、書類作成や法的根拠の記載、証拠収集などが必要となり実務的には非常にハードルが高いです。
そのため、弁護士に依頼するのが現実的です。最近では、弁護士ドットコムなどでネット誹謗中傷に強い弁護士を探すこともできます。
開示請求にかかる時間と注意点
投稿から2年以上が経っている場合、ログ(IPアドレスや投稿記録)が既に削除されている可能性があります。一般的にプロバイダはログを「3〜6ヶ月程度」しか保持していないため、2年前の投稿は開示対象として難しいケースが多いです。
ただし、掲示板運営会社がログを長期保存している場合や、投稿内容が重大な権利侵害に該当すると判断されれば、開示が認められることもあります。
まとめ:開示請求は慎重に、早めの対応がカギ
ネット上で匿名に誹謗中傷や個人情報の書き込みをされた場合、「相手が誰か知りたい」という気持ちは当然です。費用はかかりますが、法的手段によって相手を特定することは可能です。
ただし、投稿からの時間が経過していると難易度が上がるため、被害を受けたと感じたら早めの対応が重要です。また、「開示だけ」の目的でも弁護士のサポートを受けることで、成功率が高まるでしょう。