暴行・傷害の民事請求における時効の基本と加害者が不明な場合の20年時効との違いを解説

暴行や傷害による損害賠償請求においては、刑事責任とは別に、民事上の時効が存在します。特に「加害者がわかっているか否か」によって、請求可能な期間が変わる点は、被害者側にとって極めて重要です。

民法における損害賠償請求の時効の基本

暴行や傷害などによる損害に対して民事請求を行う場合、民法724条が適用され、次の2つの時効が定められています。

  • 加害者と損害を知った時から5年
  • 損害および加害者を知らなくても、暴行などの事実が発生してから20年

これは「知ったときから5年」「知らなくても20年」のいずれか早い方までが請求可能であるという、いわば除斥期間的な性格を持つ規定です。

加害者が不明な場合の「20年」の意味とは?

加害者が不明な場合、損害や加害者を「知る」ことができないため、当然ながら5年のカウントは始まりません。代わりに、事件発生日から20年間という期間が民法上の最終ラインとして機能します。

つまり、加害者が誰かわからないままでも、20年以内に判明すれば請求権は発生します。20年を超えると、たとえ後で加害者が特定されても請求することはできません

加害者を知っている場合は「5年」だけなのか?

実際には、加害者が明確に分かっている場合には、損害を知った時点から5年間という時効が適用されます。この場合、「20年」の期間は適用されません。

たとえば、顔見知りに暴力を振るわれてケガをし、その場で相手が誰であるか分かっていた場合、5年の間に損害賠償請求を起こさなければ、時効で請求ができなくなります。

併用はできない?二重にカウントされない理由

「知った時から5年」か「知らなくても20年」のいずれかであり、両方の期間を併用して長く延ばすことはできません。これは、民法上の基本原則に基づくものであり、あくまでも被害者に一定の保護を与えつつ、法律関係を早期に確定させる意図によるものです。

例外として、加害者が意図的に身元を隠し、発覚が遅れた場合などでは、「知った時点」からの5年を基準とする主張も可能ですが、20年を超えれば原則として請求できません。

具体例:時効の違いによる結末の差

例1:通勤中に面識のある同僚に暴行され、加療3ヶ月のケガを負ったケース

→ この場合、同僚の身元は明確なので、「加害者を知ったときから5年」が適用されます。5年以上経ってから損害賠償を求めても、時効で認められない可能性が高いです。

例2:駅で見知らぬ人物に突然殴られ、逃走されたため加害者不明のまま時間が経過したケース

→ この場合は、「暴行の時から20年」が請求のリミットになります。加害者が10年後に判明すれば、その時点から請求は可能です。

まとめ:加害者の有無によって異なる2つの時効ルール

暴行や傷害の被害に遭った際は、加害者を「知っているか否か」によって、時効の適用が大きく変わるという点に注意が必要です。

加害者が明確な場合は5年、そうでなければ最長20年。請求を逃さないためにも、被害を受けた時はできるだけ早期に専門家に相談し、時効の進行を把握しておくことが重要です。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール