家族の中で配偶者が会社経営をしており、その会社が倒産してしまった場合、他の家族の財産まで影響が及ぶのかどうかは、多くの方が不安に感じるポイントです。とくに自己破産となると、どこまで資産が調査・処分されるのかを正しく知っておくことが大切です。
自己破産で差し押さえの対象になる資産とは
自己破産は、債務者(この場合は夫)が支払不能となったときに、裁判所を通じて借金を免除してもらう手続きです。このときに差し押さえの対象になるのは、基本的に債務者本人の名義で保有している財産です。
つまり、名義が夫本人であれば差し押さえられる可能性がありますが、妻名義の財産については原則として対象外です。
夫婦間でも名義と所有権は別物として扱われる
たとえ夫婦間であっても、法律上は別の個人とみなされます。そのため、妻が単独で所有している財産(預金、不動産、有価証券など)は、夫が自己破産しても差し押さえの対象とはなりません。
例外として、「名義は妻だが実質的に夫の財産と認められる」場合(たとえば家計の共有資金を夫が一方的に移したケースなど)は、破産管財人によって調査・判断される可能性があります。
具体的な財産別:差し押さえ対象かどうか
資産の種類 | 妻名義であれば差し押さえ対象? |
---|---|
妻の個人口座の預金 | いいえ(原則として保護される) |
妻名義の土地・建物 | いいえ(所有の証明があれば安全) |
夫婦共有名義の不動産 | 夫の持分については対象 |
妻名義の証券口座 | いいえ(ただし実質所有を問われることも) |
このように、名義と所有者が一致していれば問題はないものの、税務署や破産管財人は「形式ではなく実質」を重視します。
夫婦間の財産移転に注意すべき点
自己破産を見越して、破産直前に夫から妻へ預金や不動産を移転するなどの行為は「否認対象取引」とみなされ、破産管財人が取り消すことがあります。これを「詐害行為」と呼び、法的に無効とされる可能性が高いです。
たとえば、破産申立の1年前に名義変更した不動産などは、特に慎重に調査される対象になります。
実務での対応とアドバイス
破産手続きの際には、配偶者や家族の資産状況についても一定の調査が行われますが、それはあくまでも「隠し財産がないか」「名義貸しがないか」を確認するためのものです。正当に保有している妻の資産まで処分対象にはなりません。
心配な場合は、弁護士や司法書士などの専門家に事前相談しておくと安心です。財産の保全や法的な整理手続きについても具体的なアドバイスが受けられます。
まとめ:夫が自己破産しても、妻の資産は基本的に守られる
結論として、夫が自己破産しても、妻の名義で所有される財産は原則として差し押さえられません。ただし、名義と実質的な所有者が異なると見なされる場合や、破産前の不自然な財産移転がある場合には調査対象になることがあります。
安心して資産を守るためには、破産の手続きに入る前に専門家に相談し、法的な準備を整えることが重要です。