労災事故で店休による売上損失は補償される?店舗経営者が知っておくべき保険と補償のポイント

店舗経営者や店長が事故により業務から離脱する場合、その影響は本人だけでなく、店舗運営や売上にも及びます。労災保険では治療費や休業補償が給付されますが、「店休による売上損失」までは補償されるのかどうか、疑問を抱く方も少なくありません。この記事では、法人の飲食店店長が労災で休業した場合に「店舗全体の損失」が補償されるのか、保険制度のしくみと実例をもとに詳しく解説します。

労災保険の基本補償範囲とは?

労災保険は、労働者が仕事中または通勤中に負った怪我・疾病などに対して、治療費(療養補償給付)休業中の所得(休業補償給付)後遺障害などの給付を行う制度です。

この制度の対象は、あくまで「被災労働者本人」に対する補償であり、店舗の営業損失や売上減少分を補填する制度ではありません。そのため、休業によって生じた店の売上損失(たとえば水曜日を定休日にしたことによる損失)は、労災保険ではカバーされません。

店休による売上損失を補償する保険はある?

労災保険では補償されないものの、企業や店舗向けの事業継続保険(ビジネスインターラプション保険)などを事前に加入していれば、自然災害や店舗責任者の入院などによって営業が停止した際の損失を補償してもらえる場合があります。

ただし、加入時点での契約条件に「労災事故による店長不在」を対象として明記しているかが大きなポイントになります。未加入であれば、店休の補償は基本的に存在しないと考えるのが一般的です。

実際に労災が発生した場合の流れと必要手続き

事故発生後は、速やかに所轄の労働基準監督署へ労災申請を行い、治療および休業補償を受ける必要があります。店舗の運営責任者(法人役員でない限り)は労働者として扱われるため、通常は労災の適用対象です。

休業補償は、給付基礎日額の80%(最初の3日は除外)が支給され、治療中のリハビリや後遺症の状態に応じた給付も段階的に続きます

法人が独自に対応できる対策とは?

法人としての店舗運営においては、店長不在時の営業体制確保や、事業継続計画(BCP)を策定しておくことが、今後のリスク対策として有効です。また、以下のような対策も検討できます。

  • 法人で休業損失保険や店舗総合保険への加入
  • 人員配置の見直しやマネージャークラスの育成
  • 店休がやむを得ない場合はテイクアウト・デリバリーの活用

上記の施策を行うことで、今後の事業継続リスクを軽減できます。

720万円相当の損失は補償されるのか?

質問にある「1年間の水曜日店休による720万円の売上損失」については、基本的には労災保険の給付対象外です。その理由は「法人の売上」は「労働者本人の損害」ではないからです。

ただし、法人として保険に加入していた場合や、損害賠償請求の相手(加害者)が別途存在する交通事故であれば、民事的に損害賠償を請求できる可能性もあります。

まとめ|労災と営業損失の補償は別枠で考える

労災保険はあくまで「働く人個人の怪我や病気に対する補償」であり、店舗全体の営業損失をカバーする制度ではありません。もし将来的に店舗責任者が長期離脱した場合に備えたいのであれば、事業保険への加入や、代替人材の育成なども含めた総合的なリスクマネジメントが重要になります。

現在補償を受けられる範囲と、補償されない範囲を正しく理解した上で、今後の備えを整えておくことが、店舗と従業員を守るための第一歩です。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール