自己破産を検討している方にとって、「どの債務が免責されるか」は重要な論点です。特に、鉄道の不正乗車に伴う増運賃や損害賠償が「免責の対象外」になるかどうかは、法的判断が分かれる場面でもあります。本記事では、破産法と鉄道営業法の観点から、実務での取扱いや注意点を解説します。
破産法における「免責されない債権」とは
破産法第253条第1項2号において、「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」は免責の対象外とされています。これは、故意や重大な過失による加害行為に対し、自己破産を利用して責任を逃れることを防止する趣旨です。
例えば、詐欺、傷害、名誉毀損などが典型ですが、不正乗車のような行為がここに該当するかは、個別事案ごとの判断となります。
鉄道営業法違反と不正乗車の法的位置付け
鉄道営業法第29条では、「乗車券を所持せず乗車した者」に対して通常運賃の3倍の額の増運賃を請求できると定めています。また、悪質なケースでは詐欺罪や軽犯罪法違反が適用されることもあります。
不正乗車はしばしば「悪意ある不法行為」と見なされることがあり、その場合は破産してもその債務は免責されないリスクがあります。
判例・実務上の考え方
実務では、不正乗車が反復継続的で、乗客側が意図的に運賃を免れようとした明確な証拠がある場合、「悪意による不法行為」として扱われ、免責されない可能性が高くなります。
一方、単発の過失的な乗り越しや、ICカードのチャージ不足などのケースでは、「悪意性」が否定され、免責が認められることもあります。
鉄道会社の請求に対する対応策
- 通知を無視しない:不正乗車があった場合、内容証明郵便などで請求が来ることがあります。無視は避けましょう。
- 謝罪・分割交渉:誠意ある対応を示すことで、増運賃の減免や分割払いに応じてもらえる可能性もあります。
- 弁護士への相談:自己破産を予定している場合、不正乗車が免責の対象になるかを法的に判断するには専門家の助言が重要です。
実際の自己破産手続での留意点
破産申立書には、すべての債権(請求)を記載する義務があります。不正乗車の請求も、たとえ免責されるか不明でも必ず記載し、債権者として鉄道会社を明記しましょう。
裁判所や破産管財人が「悪意による不法行為」と認定した場合、破産手続後も支払い義務が残ります。
まとめ:不正乗車は免責されない可能性もある
不正乗車に対する鉄道会社の請求は、ケースによっては「悪意の不法行為」とされ、自己破産しても免責されないリスクがあります。過去の行為の性質、回数、状況が判断の鍵となります。
不安がある場合は、早めに弁護士や司法書士に相談し、最善の対応を選択することが重要です。