わいせつ電磁的記録頒布罪は、インターネットやSNSの普及により、一般の人でも違法行為に該当する可能性がある犯罪の一つです。特にTwitter(現X)などのダイレクトメッセージ(DM)を利用したやりとりにおいて、知らずに罪に問われるケースも存在します。今回は、この罪の定義や成立条件、個人間のやりとりが処罰対象となる可能性について、具体的な例を交えてわかりやすく解説します。
わいせつ電磁的記録頒布罪とは?
刑法175条では、わいせつな文書や図画の頒布・販売・公然陳列などを処罰対象としています。2001年の法改正により「わいせつ電磁的記録等」の頒布も処罰の対象に加えられました。つまり、動画ファイルや画像ファイルなどのデジタルコンテンツであっても、わいせつな内容であればその頒布行為自体が処罰されることになります。
条文上の正式な構成要件は「わいせつな電磁的記録その他の記録媒体を頒布、販売、公然陳列または公然と陳列する目的で所持した者」であり、2年以下の懲役または250万円以下の罰金という刑罰が科されることがあります。
「頒布」とは不特定多数が対象?
刑法上の「頒布」とは、「不特定または多数の者に対して提供・配布すること」を意味します。これは店舗での販売やネット上への公開などを含みます。
しかし、特定の相手に限った送信、たとえば1対1のDMやメール送付が自動的に違法とは限らないと解釈されている一方で、複数人に連続的に送信した場合は「頒布」にあたると判断される可能性が高くなります。
DMで送る行為はセーフ?アウト?
1対1のDMで、成人出演の合法的なわいせつ画像・動画を送る行為は、相手の同意がある場合には基本的に処罰対象にはなりにくいとされています。ただし以下のような点に注意が必要です。
- 受け取り側が未成年だった場合(児童ポルノ禁止法違反になる可能性)
- 繰り返し送信している場合(「多数」と見なされる恐れ)
- 相手の同意なく送信した場合(迷惑防止条例やストーカー規制法違反の可能性)
また、SNS上の利用規約違反としてアカウント凍結などの処分を受けることもあります。
過去の判例から見る境界線
実際に、SNSや掲示板で複数人に動画を送付して逮捕された事例もあり、わいせつ電磁的記録頒布罪は意外と適用範囲が広いことがわかります。たとえば、LINEのオープンチャットに投稿する行為は、不特定多数への「頒布」と見なされやすく、違法とされる傾向にあります。
一方、1対1のメールでのやりとりが罪に問われたケースは少なく、処罰対象となるには「頒布性」「公然性」「営業性」などが加味される必要があります。
出演者が成人済みでも注意が必要
出演者がすべて成人であっても、わいせつ性が高い内容であれば違法とされる可能性はあります。特にコンテンツを第三者から取得した場合、その正当な権利が自分にあるか確認しないまま送信・頒布すると、著作権法違反や無許可販売として別件で問題になることもあります。
まとめ:わいせつ電磁的記録頒布罪は個人間でも油断できない
「DMで送るだけだから大丈夫」と思いがちですが、相手の人数、関係性、同意の有無、年齢、送信内容などによっては違法とされるリスクが伴います。特に相手が未成年であった場合は、重大な刑事責任を負うこともあるため、十分な注意が必要です。
わいせつ電磁的記録頒布罪に関しては、法的な知識と倫理観をもって行動することが求められます。SNSやメールなど手軽な手段でも、法律が適用される以上、軽視せずに理解しておくべきでしょう。