危険運転による重大事故は、被害者やその家族の人生を一変させ、社会全体に深い影響を与えます。そのような事故を二度と起こさせないためには、単に感情的な制裁ではなく、法制度、心理、社会支援を含めた複合的な視点が求められます。
現行法における危険運転致死傷罪の厳罰化
日本では「危険運転致死傷罪」（刑法第208条の2）により、悪質な運転行為に対して最長で懲役20年（複数被害者なら30年）という重罰が科されることがあります。
対象となるのは、著しい飲酒や薬物運転、無免許運転、高速での無謀な運転などで、立証が困難なケースも多く、法的適用には慎重な審査が求められます。
免許取消・再取得制限の強化
再発防止には免許制度の見直しも重要です。現在でも免許取り消しや再取得に一定の制限期間がありますが、危険運転による重大事故の加害者に対し、永久的な再取得不可などの制度を導入すべきという声もあります。
実際、欧米では複数回の飲酒運転で終身免許取消になる事例もあり、日本でも再発防止として参考になる制度です。
再犯リスクを減らす治療的アプローチ
全ての危険運転が故意とは限りません。衝動性の高い精神状態やアルコール・薬物依存によって引き起こされることもあります。
このような加害者に対しては、再教育プログラムや依存症治療を義務化するなど、治療的司法アプローチが求められます。米国では「DUI裁判所（飲酒運転者対象の特別裁判所）」が設けられ、再犯率の低下に寄与しています。
被害者・遺族の納得を得るには？
加害者への厳罰を求める声がある一方、被害者や遺族の心のケアと補償制度の充実も重要な課題です。
刑事罰だけでなく、民事上の賠償責任、行政による被害者支援制度の整備により、「二度と同じことを起こさせない」という社会的意志を可視化することが被害者の納得にもつながります。
テクノロジーによる予防的手段の強化
車両側の安全技術も年々進化しています。例えば、自動ブレーキや居眠り検知機能、アルコール検知システムを標準装備とすることで、人的エラーによる事故を未然に防ぐ技術的対策が現実化しつつあります。
また、一定の違反歴がある者に対しては、ドライブレコーダーの義務化や走行データの提出を求める制度設計も検討され始めています。
まとめ：厳罰か抑止かではなく、社会全体で再発防止へ
危険運転による重大事故は許されるべきではありませんが、死刑や身体刑のような過激な手段が現実的かといえば、法治国家としての原則に反します。
むしろ、厳罰化、教育、テクノロジー、再発防止支援の多層的な取り組みによって、社会全体で「二度と起こさせない」仕組みを築くことが本質的な対策といえるでしょう。