日本における企業統治の強化は、上場企業にとどまらず、非上場企業や中小企業にも影響を与えつつあります。とりわけ社外役員の導入や女性登用の流れは、今後の企業運営に大きな変化をもたらす可能性があります。
企業統治改革の背景と上場企業への影響
日本では2015年のコーポレートガバナンス・コードの導入以降、企業統治に関する制度が強化されてきました。上場企業に対しては社外取締役の設置が事実上義務化され、2022年には女性役員の登用を含む多様性の確保も求められています。
経済産業省や金融庁は、企業価値の持続的向上を目的に、透明性や説明責任を重視した経営を促進しており、海外投資家からの信頼確保という意味でもガバナンス強化は重要です。
非上場企業への適用拡大の可能性
現時点で、非上場企業に対して社外取締役や社外監査役の設置が義務づけられているわけではありませんが、将来的には努力義務として導入される可能性が指摘されています。
とくに中小企業庁では「非上場でもガバナンス強化によって取引先や金融機関からの信頼が高まる」として、経営強化の一環としての導入を推奨する流れがあります。
女性役員の義務化と今後の人材像
政府は2022年に「女性役員比率30%以上」という目標を掲げ、2025年以降、上場企業に対して1/3以上の女性登用を求める方向性が示されています。
想定される人材像としては以下のようなケースが挙げられます。
- 士業系女性:弁護士や公認会計士などの資格者
- 大学の教授など専門知識のある人物
- 官僚出身の女性:法制度や政策理解のある人材
- 一般企業からの選抜:内部登用の女性管理職など
メディアなどで知名度のある人物の登用もありますが、それは企業のイメージ戦略の一環であり、実務経験やガバナンス知識を兼ね備えているかどうかが選任のポイントです。
社外役員の女性比率義務化の可能性
今後は単に社外取締役や監査役の設置義務だけでなく、「多様性の確保」の観点から、社外役員の構成においても女性の比率が重視される可能性が高いです。
EUではすでに「女性比率40%以上」の義務化が始まっており、日本でも同様の法制化が議論されることは十分に考えられます。
まとめ:ガバナンス強化は企業体質の健全化につながる
企業のガバナンス強化は、「コンプライアンス」「透明性」「持続可能性」といった観点から、社会的責任を果たすためにも今後さらに進展していくでしょう。
非上場企業も例外ではなく、先んじてガバナンス体制を整えることが、将来の信頼性や競争力向上に寄与します。