離婚後、父親が親権を取得して子どもを育てるケースは少数派ですが、実際には法的に認められた正当な形です。ただし、元配偶者が後になって親権変更を求めてくることもあります。この記事では、親権変更が認められるケースとその対策について詳しく解説します。
親権は簡単に変更されるものではない
一度確定した親権は、原則として家庭裁判所の調停や審判なしに変更されることはありません。勝手に変更することはできず、親権変更には法的な正当理由が必要です。
つまり、現時点でお子さんが父親と安定した生活を送り、保育園にも元気に通っている状態であれば、母親が「やっぱり親権がほしい」と言ったからといって、すぐに変更が認められることは極めて稀です。
親権変更が認められる具体的なケース
家庭裁判所が親権変更を認めるのは、次のような場合に限られます。
- 現在の養育環境に問題がある:虐待やネグレクト、重大な育児放棄が認められた場合。
- 子どもの意思が大きく反映される年齢:おおむね10歳以上で、明確に「母親と暮らしたい」と述べた場合。
- 親の生活状況の著しい変化:例えば、父親が長期入院し、養育が物理的に不可能になったなど。
上記のような事情がない限り、親権変更は原則として認められません。
「継続性の原則」と「母性優先」はどうなる?
家庭裁判所では、「子どもの福祉」が最優先に考慮されます。継続性の原則とは、「今の環境が安定しているなら、あえて変えるべきではない」という考え方です。これが父母どちらに親権があるかよりも重視されます。
一方、「母性優先の原則」は、特に乳幼児期において母親の存在が心理的安定につながるという考えに基づくものですが、父親が適切な養育をしている場合には適用されないこともあります。
親権トラブルへの備え|実績を記録することが大切
親権を守るうえで大切なのは、日々の育児実績を明確にしておくことです。
例えば。
- 保育園への送り迎えの記録
- 定期的な健康診断や予防接種の記録
- 写真や動画による子どもの生活状況の記録
- 保育士・医師など第三者からの証言・評価
これらを準備しておくことで、仮に調停や審判になった場合にも「父親が安定して子を養育している」ことを客観的に証明しやすくなります。
親権変更の申し立てを受けたときの流れ
元配偶者が家庭裁判所に親権変更の申し立てを行った場合、次のような流れになります。
- 家庭裁判所から調停の呼出状が届く
- 調停で事実確認や双方の主張を聴取
- 合意できなければ審判へ移行
- 裁判官が「子の福祉」に基づき判断
この段階で、前述のような記録が有効な証拠となります。
まとめ|冷静に対応し、親権を守るための備えを
親権は一度決まれば簡単に変わるものではありません。父親が誠実に子どもを育てており、環境も安定していれば、原則として変更は認められません。母親が希望を述べたからといって、それだけで不安に感じる必要はありません。
大切なのは、子どもが安心して暮らせる環境を整えること、そしてそれを証明できる準備をしておくことです。不安な場合は、家庭裁判所や弁護士に早めに相談することをおすすめします。