コンビニの屋外喫煙所や公共の場では、予期せぬ接触によりスマートフォンなどの私物が破損するトラブルも起こりがちです。では、立ち止まってスマホを見ている最中に他人がぶつかってきて端末を落とした場合、その過失責任はどうなるのでしょうか。本記事では、喫煙所などでの接触事故における過失割合について、法的視点と実務の考え方を交えて詳しく解説します。
民法上の過失責任の基本的な考え方
まず民事責任(不法行為責任)は、民法709条に基づき「故意または過失によって他人に損害を与えた者」が賠償義務を負います。つまり、相手方に過失があれば、被害者は損害賠償を請求できる可能性があります。
ただし、このような接触事案では、状況に応じて「被害者側にも注意義務違反(過失)」が問われることがあるため、全額の補償が認められるとは限りません。
喫煙所におけるスマホ落下事案の特徴
喫煙所は本来「短時間の喫煙のための共用スペース」であり、椅子などの設備がなく、通行人や利用者が立ち入ることもあるため、一定の接触リスクは想定されます。
今回のように「喫煙所で立ち止まってスマホを見ていた場合」、それ自体は不法行為とは言えませんが、「周囲の状況に配慮していなかった」と判断されれば、わずかでも過失が認定される可能性があります。
実際に起こったケースと裁判例
たとえば過去には、満員電車内でのスマホ落下や、駅のホームで他人と肩が触れて端末が落下した事例などで「被害者・加害者ともに一定の注意義務があった」として、過失相殺が行われた判例があります。
これと同様に、喫煙所という限られたスペースで他人が近づく可能性を認識できる状況であれば、「回避行動を取らなかったこと」が一定の過失とみなされることもあるのです。
過失割合の考え方と想定される落としどころ
このような接触事故では、明らかに加害者側の不注意による接触であっても、「被害者にも10~30%の過失」が認定されることが裁判実務上は多いです。
たとえば、相手が後ろを見ずに突っ込んできたなど明白な過失がある場合でも、「狭い場所でスマホを使っていたこと」「荷物や身体の位置で他人の動線を塞いでいたこと」などがあれば、一定の過失を問われる可能性があります。
損害賠償請求の可否と現実的な対応
このようなケースで相手方に損害賠償を求めることは可能ですが、証拠の有無(目撃者、防犯カメラ、当時の状況の記録)が重要になります。また、相手方が任意で応じない場合は、少額訴訟などの法的手続が必要になることもあります。
なお、物損事故については「故意または重大な過失」がない限り、刑事責任は問われにくいため、基本的には民事上の損害賠償請求となります。
まとめ:完全に動いていなくても過失ゼロとは限らない
コンビニの喫煙所でスマホを見ていた際に他人がぶつかって落としてしまった場合、動いていなくても完全な無過失と判断されるとは限りません。状況に応じては過失相殺が行われ、賠償額が減額されることも考えられます。
実際の責任割合はケースバイケースとなるため、トラブル発生時には状況の記録を残し、弁護士や消費者相談窓口に相談するのが適切です。喫煙所など共用スペースでは、接触リスクに対する意識も重要です。