近年、家庭内トラブルや遺産を巡る争いが複雑化し、親族間での縁切りや相続財産の不正取得が社会問題になりつつあります。この記事では、精神的な問題を抱える家族や過去に刑事事件を起こした親族との関係が絡む中で、民事訴訟で争えるかどうかを整理し、対応のヒントを解説します。
遺産相続と民事訴訟の基本構造
遺産相続に関する民事訴訟は、一般的に「遺留分侵害額請求」「不当利得返還請求」「損害賠償請求」などが用いられます。これらは、法定相続人が不正な形で相続財産を奪われた場合や、他の親族が財産を不正に取得・使用した場合に利用できます。
たとえば、老人ホームの部屋から通帳や印鑑を無断で持ち出し、年金や預金を引き出した場合、それは明確な不正取得とされ、民事訴訟の対象になります。
妹の死と葬儀なしの事例から考える民法上の問題
戸籍で死去を確認したが、葬儀も連絡もなく、家族が死亡を知らなかった場合でも、相続手続きは法的に進行します。問題は、誰が遺産を管理し、誰が取得したかです。
相続人であるにも関わらず財産の内容が明らかにされていない、あるいは情報が隠蔽されている場合、「相続財産の開示請求」や「遺産分割調停」が有効な対応手段となります。
通帳・印鑑の持ち出しと年金流用：これは罪か？
遺族の死後に通帳や印鑑を持ち出し、年金や預貯金を引き出す行為は、窃盗や横領、あるいは不当利得に該当する可能性があります。たとえ親族であっても、無断で相続財産を使うことは許されません。
これに対しては、刑事責任を問う刑事告訴と並行して、不当利得返還請求を民事で行うことが可能です。
縁を切った親族と法律的関係：それでも請求できる？
弁護士により「縁を切るように」と言われたとしても、法的な相続権は婚姻・血縁関係により決まるため、一方的な絶縁では法的関係が消えるわけではありません。
法定相続人であれば、遺産分割協議への参加や、財産の開示を求める権利は引き続き持ちます。
弁護士を通じた対応と実務上のポイント
こうした事案は感情的な対立が絡むため、相続専門の弁護士に早期相談することが重要です。相手側とのやり取りは感情が絡みやすく、冷静かつ法的に対処することが求められます。
実際に訴訟へ発展する前に、内容証明郵便で「財産の使用停止」や「情報開示」を要求し、話し合いの余地があるかを探る段階が一般的です。
まとめ：泣き寝入りせず、法的対応を
精神的に不安定な親族や過去に問題を起こした人物が関係する中でも、相続財産の保護と正当な取得の権利は法によって守られています。たとえ情報が隠されていたとしても、戸籍、財産情報の収集、証拠確保を進めながら、民事訴訟を検討することで対応は可能です。
遺産や財産に関する問題は、放置すれば他の親族による既成事実が積み重なります。早めの相談と法的手段の活用で、大切な権利を守りましょう。