未成年契約の取消しはどの国の法律が適用される?国際私法における行為能力とネット通販契約の法的整理

グローバルに展開されるネット通販では、消費者と事業者が異なる国の法域に属していることが珍しくありません。特に購入者が成人か未成年かという「行為能力」の問題は、契約の有効性に大きく関わります。本記事では、法の適用に関する通則法(日本)を軸に、行為地が異なる場合の未成年契約の取消し可否について詳しく解説します。

日本人が外国で成人年齢に達していない場合の契約効力

たとえば、日本では成人とみなされる20歳(現行は18歳)であっても、A国ではまだ未成年にあたる年齢である場合、その国の法律における「行為能力」が問われる可能性があります。

このようなケースにおいて、どの国の法律を適用すべきかは、法の適用に関する通則法第3条〜第5条に基づいて判断されます。

行為能力に関する原則:通則法第4条の考え方

通則法第4条第1項では、行為能力は「本人の本国法による」と定められています。つまり、契約者が日本人であれば原則として日本の法律に基づいて判断されます。

ただし、同条第2項では次のような例外が設けられています。

行為がされた地の法律によればその行為を有効にする能力を有する者がその地でした行為は、その本国法がこれを制限していても、有効とする。

このことから、たとえば日本人がA国に渡航中に、A国の法律で成人とされる年齢で契約を行った場合、その契約は「A国で有効な行為能力があった」とされて、日本の未成年規定によって取消すことはできない可能性が高くなります。

すべての当事者が同一法域にいない場合の例外的解釈

通則法4条第2項の「その行為がされた地」とは、契約が締結された場所(物理的行為地)を指すのが一般的です。

仮に日本人が日本国内からインターネットを利用して、A国企業の通販サイトで商品を購入した場合、この契約は日本で行われた契約行為とみなされ、日本法に基づく未成年者取消権が適用される可能性が出てきます。

一方で、もしその日本人がA国に滞在中で、A国のIPアドレスから契約を結んだ場合、これは「A国での行為」となり、通則法第4条2項の適用によって日本法上の未成年取消権は及ばない可能性があります。

逆パターン:日本法では未成年だが、A国では成人している場合

この場合、行為地がA国であるなら、A国法で成人とされていれば契約は有効です。よって、日本の未成年取消権は主張できないと考えられます。

一方、契約が日本からのネット注文だった場合は「日本で行われた契約行為」と見なされ、本国法である日本法が適用される可能性が高いため、取消しが可能なケースもあります。

このように、国際契約では「どこで」「誰が」「どの法律のもとで」行為したかが複雑に絡みます。

実際に契約を取り消したい場合の対応策

① 契約者の年齢と契約地を明確に確認

② 相手企業に対し「自分は本国法で未成年であるため、法定代理人の同意を得ていない契約は取り消す」と通知

③ 証拠としてメールや注文履歴を保全

④ 契約地が国外の場合は、専門の弁護士(国際私法・消費者保護に詳しい)に相談

⑤ クレジットカード会社へのチャージバック請求も一手段となり得ます

まとめ

・原則、行為能力は「本人の本国法」で判断(通則法第4条1項)

・ただし行為地で有効な能力があれば、その契約は有効とされる(同条2項)

・ネット通販契約においては「契約が成立した場所」がどこかが重要

・本国法が未成年でも、行為地が成人扱いなら取消はできないことも

・契約地や通則法の内容に基づき、慎重に対応を進める必要があります

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