父が余命宣告を受け、亡くなった後の公共料金を支払うためにお金を預かっている場合、それを相続手続きにどう扱うべきか悩む方は少なくありません。本記事では、預かったお金の法的位置づけと相続手続き上の整理方法を分かりやすく解説します。
預かったお金は「特定目的の信託」に近い扱い
公共料金の支払い目的で預かったお金は、被相続人の一般的な遺産ではなく、特定の目的(支払い)に使うために用意された金銭とみなされることが多いです。
法律的には「信託」「預託」または「目的付与」が認められるケースであり、相続財産とは分離して取り扱えます。
相続財産に含める?除外できる?
相続開始時点でそのお金が明確に“公共料金支払いのために確保されたもの”であるなら、他の相続財産と区別して取り扱うことで、相続財産から除外することが可能です。
ただし、書面や口座の分別が曖昧であれば、他の相続人との合意や遺産分割協議の中で明確化する必要があります。
実務ポイント:名義・使途の証拠を準備しよう
例えば、「公共料金支払い用」として別口座・別財布に保管し、領収書や明細を保管しておけば、用途の明確化につながります。
逆に一つの口座に混ぜて預かっている場合は、相続手続きの際に「これは公共料金分です」と主張できる形跡を残しておくのが重要です。
相続放棄との関係性と注意点
相続放棄をする場合、預かったお金も放棄対象と見なされる可能性がありますが、実際には相続財産ではないため放棄の対象外となります。
行政書士・司法書士にも、相続放棄の申し立て前に「預かり金は除外の対象となる」旨を確認すると安心です。
他の相続人との調整方法
預かったお金を相続財産とは別扱いにするには、遺産分割協議書に以下のように明記するのが実務的です。
- 「□□円は被相続人の公共料金支払いのために管理していたお金として、相続財産と別扱いとする」
- 「月々の人生継続維持用として、引き続き支払いに充当する」など用途と管理者を明記
このような文言があれば、相続人全員の合意の上で明確に整理できます。
まとめ
・公共料金支払い用のお金は、相続財産と区別して取り扱うことが可能です。
・実務上は別口座・領収保管・遺産分割協議書への明記といった証拠・手続きが重要になります。
・相続放棄を選ぶ場合でも、預かったお金は相続対象外と整理すれば影響しません。
安心して相続手続きを進めるために、専門家にも相談しながら明確な整理を心がけましょう。