交通事故で重度のケガを負ったあと、手術やリハビリを経ても「傷跡が残った」「体内にボルトが入ったまま」などの症状が続くケースは少なくありません。こうした状態は、後遺障害等級に該当する可能性がありますが、認定には厳密な基準があります。この記事では、「手のひら大の傷跡」や「体内金属の残留」など、具体的な認定条件と実務対応を詳しく解説します。
そもそも後遺障害認定とは?保険対応の重要な鍵
交通事故後の治療が終了しても、症状が完全には回復しない状態を「症状固定」と呼び、その後も続く障害を「後遺障害」といいます。後遺障害が認定されると、自賠責保険や任意保険から後遺障害慰謝料や逸失利益などの賠償金を受け取れる可能性があります。
この等級認定には1級から14級まであり、症状の内容や生活・労働への影響度によって分類されます。認定されるためには、医師の診断書や画像資料(レントゲン、MRIなど)を揃え、保険会社または弁護士を通じて申請する必要があります。
「手のひら大の傷跡」とは?等級に該当する面積の目安
後遺障害の等級認定では、「醜状障害(しゅうじょうしょうがい)」というカテゴリで傷跡が評価されます。ここでよく出てくるのが「手のひら大」=おおむね12cm×8cm前後という面積基準です。
傷跡の形状や方向(縦長か横長か)に関係なく、おおむね面積が手のひらに相当するかどうかが判断基準となります。たとえば、縫い跡が縦20cm、横幅1cmなどでも、合計面積が十分でなければ「手のひら大」とは認められない可能性があります。
ただし、開腹手術や大腿骨の手術跡は比較的傷が大きくなることが多く、状態によっては後遺障害12級や14級の認定を受けることもあります。
体内に金属(ボルト)が残っている場合は認定される?
交通事故による骨折の治療で、ボルトやプレートが体内に残ることはよくあります。このようなケースでは、「異物残存」として後遺障害等級の対象となります。
一般的には、可動部位(股関節、膝関節、肘など)に金属が残っており、それによって運動障害がある場合には12級、13級、または14級が認定されやすいとされています。
ボルトが残っているだけで日常生活や労働に支障がなければ、非該当とされる場合もあるため、医師による「運動制限の診断書」が重要です。
開腹手術による傷跡も対象になる可能性あり
腸膜の破裂や内臓損傷によって開腹手術が行われた場合、その傷跡の大きさ・位置によっては「胸腹部に手のひら大の瘢痕」として後遺障害14級が認定される可能性があります。
特に、傷跡が膨らんだり、赤黒く目立つ場合、または引き攣りによる痛みが続くようであれば、見た目の醜状障害+機能障害の両面から評価されることがあります。
後遺障害の申請に必要な書類と手続き
後遺障害等級認定のためには、以下の資料が必要となります。
- 後遺障害診断書(指定様式)
- CT、MRI、レントゲン画像
- 傷跡の写真(なるべく自然光下で撮影)
- 症状固定日が記された診療記録
- 日常生活への影響を証明する陳述書
これらの書類を保険会社または弁護士を通じて、自賠責保険の損害調査事務所に提出する流れとなります。
弁護士への相談も選択肢の一つ
後遺障害認定は専門的な判断が必要であり、自力では非該当となるリスクもあるため、交通事故に強い弁護士への相談も検討しましょう。
弁護士費用特約が自動車保険に付帯していれば、自己負担ゼロで弁護士に依頼できるケースもあります。特に異議申立てや等級認定の再審査では、法的サポートが効果的です。
まとめ:傷跡・金属・開腹歴があるなら後遺障害申請は前向きに
交通事故で手術痕やボルトが残っている方は、後遺障害等級の対象になる可能性があります。「手のひら大」といった表現に惑わされず、面積や位置、症状を正確に把握し、必要な書類を整えて申請を進めましょう。
認定されれば、慰謝料や逸失利益といった補償を正当に受け取ることができます。不明点があれば、迷わず専門家に相談することが納得の結果につながります。