近年、SNSを利用して異性になりすまし、個人的な情報を聞き出す「ネカマ(ネット上のオカマ)」行為が問題視されています。単なる遊びのつもりでも、行為の内容や相手との関係性によっては法的なトラブルに発展する可能性があります。本記事では、なりすましによる情報収集がどこまで許容され、どのようなリスクをはらんでいるのかを法律の観点から解説します。
ネカマ行為とは?
「ネカマ」とは、インターネット上で男性が女性を装って活動することを指す俗語です。近年では逆パターンも含めて、性別を偽る行為全般を指すこともあります。
SNSなどで友人や見知らぬ人とやりとりする際、プロフィールやアイコン、話し方を女性のように装ってやりとりを続けることは、技術的には簡単ですが、信頼関係を前提としたコミュニケーションの観点からは非常にデリケートな問題をはらみます。
法律的に問題となる可能性があるケース
ネカマ行為自体は、ただちに違法とは言い切れませんが、以下のような行為に発展した場合、法律上の問題が発生する可能性があります。
- なりすましによって性的な話題を誘導する:相手が未成年だった場合、「児童ポルノ禁止法」や「青少年保護条例」などに触れる恐れがあります。
- 虚偽の身分による騙し取り:たとえ金銭の授受がなくても、相手のプライベートな情報(恋愛遍歴や性的体験)を「だまし取る」目的でなりすましを行った場合、場合によっては詐欺罪や不法行為として訴えられる可能性があります。
- プライバシー侵害:性的な内容や身体的特徴など、非常にプライベートな情報を本人の同意を得ずに集める行為は、「プライバシー権の侵害」に該当することがあります。
刑事責任と民事責任の違い
このような行為が発覚した場合、すぐに警察沙汰になるとは限りません。ただし、相手が精神的な苦痛を感じた場合には、民事訴訟で慰謝料を請求される可能性は十分にあります。
また、行為の内容がエスカレートすれば、「侮辱罪」や「名誉毀損罪」などの刑事責任を問われる可能性もゼロではありません。SNSの運営会社によっては、利用規約違反としてアカウントの停止措置が取られることもあります。
実際にあった類似事例
たとえば、ある大学生がSNS上で女性を装い、他の女性から恋愛話や性的経験を聞き出していたケースでは、相手の家族から「性的羞恥心を悪用された」として大学側へ通報が入り、学内処分(停学処分)を受けたという報告があります。
また、ある会社員が匿名で女性を装いSNS上で同僚女性の恋愛経験を聞き出した行為が発覚し、社内ハラスメントとして処分を受けた事例もあります。
被害者の心理的影響と倫理的側面
ネカマ行為によって情報を聞き出された相手は、裏切られたと感じ、深い不信感や羞恥心を抱くことがあります。たとえ情報が外部に漏洩されていなくても、メンタルに与える影響は大きく、後にトラウマや対人不安に発展することもあります。
このような観点からも、たとえ遊びであっても倫理的に許容される行為とは言い難く、大学などの組織内では懲戒対象となる場合もあります。
まとめ:ネカマ行為はグレーゾーン、だが法的・社会的リスクは大きい
異性を装ってSNS上でプライベートな情報を聞き出す行為は、必ずしも明確な犯罪とは言えないまでも、状況によっては法律違反・損害賠償・社会的制裁の対象となりえます。
また、被害者が受ける精神的ダメージは深刻であり、最悪の場合は法的措置や学内処分、社会的信用の失墜に発展することもあるため、安易な気持ちで行うべきではありません。