別れた相手から突然「過去に車を傷つけた修理代を払え」と連絡が来た場合、どう対応すべきか困惑する方も多いでしょう。この記事では、過去の出来事に対して後から請求があった場合の法的な考え方、支払い義務の有無、裁判になった場合のポイントについて解説します。
一度許された損害賠償請求は原則として無効
まず重要なのは、「その時に許された行為かどうか」です。損害賠償請求には、法的には「請求権の放棄」と「時効」の概念があります。
たとえば、あなたが車に傷をつけた際に、相手が「大丈夫だよ」「気にしないで」などと明確に許した発言をした場合、それは損害賠償請求権を事実上放棄したと解釈される可能性が高いです。
実際の判例でも、「相手が自発的に許した場合、その後に金銭請求はできない」とされたケースがあります。
傷が修理されている=損害の補填は完了している
今回のケースでは、後日相手が別の事故で同じ箇所を損傷し、その際に保険会社の費用で全体が修理されたという点が非常に重要です。
民法上の損害賠償の基本は「実際に被った損害に対して補填する」ことです。つまり、既に修理されており、傷が残っていないのであれば「損害は存在していない」とみなされる可能性が極めて高いです。
したがって、仮にあなたが加えた傷が原因であっても、その部分が修復されており新たな費用が発生していないのであれば、支払い義務が生じる可能性は極めて低いと考えられます。
写真や証拠があっても支払い義務があるとは限らない
相手が「写真がある」「証拠がある」と主張している場合でも、その写真が証明できるのは“過去に傷があったこと”だけです。
法的には、損害の存在と相手の責任、そして損害が現存していることをすべて立証しなければ請求は認められません。
さらに、あなたが当時運転していた事実を認めていたとしても、「修理費相当額を請求する正当性があるか」は別問題です。修理が完了しており、相手に追加の損害がない場合、金銭請求は基本的に認められません。
裁判になったらどうなる?争点は「損害の有無」
仮に相手が訴訟を起こした場合、裁判所が判断するのは次の3点です。
- ① あなたが損害を与えたか(事実関係)
- ② 相手がそれを許していないか(放棄の有無)
- ③ 現在も損害が存在しているか(修理されたか)
あなたのケースでは、修理が完了しており損害が残っていないことに加え、過去に許された事実があるのであれば、裁判で相手の主張が認められる可能性は低いと考えられます。
また、民法第715条や第416条などの「損害賠償責任」は、実害に基づいていなければ成立しないため、形だけの主張では法的効力は乏しいです。
冷静に対応するためのおすすめの行動
- ① 書面・LINE・メールでやり取りを記録:相手の要求や発言を記録しておくことが大切です。
- ② 「法的に争う意思があるなら、正式に通知を」と伝える:感情的な応答は避け、相手が本気かどうか見極める。
- ③ 司法書士や弁護士に相談:可能であれば一度、法律専門家に相談して備える。
特に弁護士に相談すると、正式な回答を用意してもらえるため、相手が安易に脅すような連絡をしづらくなります。
まとめ:修理済みの損害に後から請求されても支払い義務なし
今回のようなケースでは、既に損傷箇所が修理されていて、現在も損害が存在していないのであれば、法的に支払い義務は発生しません。加えて、当時相手が許した事実があれば、請求権自体が消滅している可能性もあります。
突然の請求に不安を感じるかもしれませんが、冷静かつ記録を取りながら対応し、不当な圧力には法的根拠をもって拒否できるよう備えておきましょう。