警察が虚偽の内容で捜索差押許可状を取得したら?違法捜査とその刑事責任を徹底解説

令状による捜索・差押えは、憲法や刑事訴訟法によって厳格に規定された重要な手続きです。では、もし警察官が虚偽の情報を使って裁判所から捜索差押許可状を取得した場合、どのような問題が生じるのでしょうか?この記事では、その法的リスクや該当する犯罪について詳しく解説します。

■捜索・差押許可状の基本とその重要性

日本国憲法第35条および刑事訴訟法第218条により、捜索や差押えを行うには、裁判所の発付する令状(捜索差押許可状)が必要です。

この令状は、捜査機関が裁判官に提出する「捜索差押請求書」の記載内容に基づき発行されます。したがって、記載内容に虚偽があれば、違法な令状発付となる恐れがあります。

■警察官が虚偽記載をした場合に問われる罪

警察官が意図的に虚偽の事実を記載し、捜索差押許可状を得た場合、次の罪に該当する可能性があります。

  • 虚偽公文書作成罪(刑法第156条):公務員が虚偽の内容を公文書に記載した場合に適用。懲役1年以下または禁錮
  • 職権濫用罪(刑法第193条〜194条):職権を濫用して人に義務のないことをさせた場合に適用。懲役2年以下または禁錮
  • 特別公務員職権濫用罪(刑法第194条):逮捕・捜索・押収等の職務において違法行為をした場合。特に重大視されます。

また、捜査活動が違法であれば、取得された証拠は「違法収集証拠排除法則」により証拠能力を否定されることもあります。

■過去の実例:違法令状取得で問題化したケース

2013年、ある捜査官が捜索対象者に関する客観的証拠が不十分なまま、「確実に関与している」と虚偽記載して令状請求した例で、証拠能力が否定された上に、警察内部で処分を受けた事例があります。

このようなケースでは、証拠排除・国家賠償請求の対象にもなり得るため、極めて重大な違法行為です。

■刑事責任以外の影響:懲戒処分・信用失墜

虚偽記載が発覚した場合、刑事罰のほかに次のような処分も下される可能性があります。

  • 停職や免職などの懲戒処分
  • 警察官としての信用失墜
  • 被疑者や市民からの民事訴訟(国家賠償法に基づく損害賠償請求)

さらに、検察庁が起訴する可能性もあり、警察内部の組織的責任にまで波及することもあります。

■まとめ:令状請求における虚偽記載は極めて重い違法行為

警察が虚偽の内容を記載して捜索差押許可状を取得した場合、虚偽公文書作成罪や職権濫用罪に問われる可能性があり、刑事・民事・行政の各側面で重大な責任が生じます。

市民の権利と捜査権のバランスを維持するためにも、司法手続きの適正さは何よりも重要です。不当な捜査に関しては、弁護士に相談し、適切に対処することを強くおすすめします。

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