身近な家族が亡くなった後、銀行に連絡して口座が凍結されると、「この口座は相続しないといけないのか?」「相続放棄したらどうなるのか?」といった疑問が浮かびます。特に、相続人全員が放棄する予定の場合、口座をそのままにしてよいのか悩む人も多いでしょう。本記事では、相続放棄と凍結口座の関係、放置した場合の影響、手続きのポイントについて解説します。
故人の口座は必ず相続しないといけないのか?
結論から言えば、相続人が相続放棄すれば、その口座を“相続しないこと”は可能です。相続放棄とは「亡くなった方の財産も借金も一切引き継がない」という家庭裁判所への正式な手続きであり、相続権自体がなくなるため、口座の相続手続きも不要になります。
ただし、相続放棄の手続きは被相続人の死亡を知ってから3か月以内に行う必要があるため、放棄する場合は早めの対応が重要です。
相続放棄後、故人の口座はどうなる?
相続人全員が相続放棄を行うと、法定相続人が存在しない状態となり、故人の財産(預金など)は「相続財産法人」として扱われます。この時点で、口座は銀行側で凍結されたままとなり、通常の手続きでは誰も引き出すことができません。
将来的にこの財産の処分を希望する場合、「相続財産管理人」の選任を家庭裁判所に申し立てる必要がありますが、これは時間も費用もかかるため、少額口座であればそのまま放置されるケースもあります。
故人の口座を放置しても大丈夫なのか?
現実的には、口座に残高があっても凍結されたまま誰も手を付けなければ、一定期間後に「休眠口座」扱いとなり、最終的に預金保険機構などに移管される可能性があります。三井住友銀行など大手行では、10年以上動きのない口座は休眠扱いになることがあります。
ただし、放置することで法的なトラブルが生じることはほとんどなく、「相続放棄済み」である限り、管理責任や請求義務は発生しません。
注意点:相続放棄をしても“次順位相続人”に影響が及ぶ
第一順位(子供)が全員相続放棄をすると、次に第二順位(親)、それもいない場合は第三順位(兄弟姉妹)が法定相続人になります。相続放棄をすると、次の順位の人が新たに相続人になる点に注意が必要です。
たとえば、おばあさまの子供たちが放棄すると、おばあさまの兄弟や姪甥が法定相続人になり、銀行から連絡が行く可能性もあります。そのため、親族間で相続放棄する旨を事前に共有しておくと、混乱を防げます。
相続放棄後に銀行からの書類が届いたらどうする?
相続放棄をしていることを銀行に伝えれば、それ以上の手続きは不要です。届いた書類には返信義務はなく、裁判所から発行された相続放棄受理証明書をコピーして提出すれば、以降の連絡は止まることもあります。
相続放棄の証明は、念のため控えておきましょう。
まとめ
故人の銀行口座は、相続放棄をすれば引き継ぐ義務はなく、口座を放置しても法的には問題ありません。ただし、他の親族に相続権が移る可能性や、銀行からの連絡が来ることもあるため、相続放棄の意思表示と書類の管理はきちんと行いましょう。
相続放棄を含めた対応には期限もあるため、専門家(司法書士や弁護士)に一度相談するのも安心です。