交通事故を起こした際に「診断書を警察に出されたくない」と思ってしまうのは、前歴がある場合や免停を避けたい事情がある人にとっては切実な悩みです。しかし、法律上どうなるのか、またどのようなリスクや対処法があるのかを正しく理解することが重要です。
交通事故後の診断書は誰が警察に出すのか?
診断書を警察に提出するのは通常、被害者側です。医療機関で診断を受けた際、「警察に提出する用です」と明言して診断書を発行してもらうと、その後の捜査資料として活用されることになります。つまり、加害者が望まなくても、被害者が警察に届け出ることで捜査や処分が開始される可能性が高くなります。
特に人身事故扱いになると、刑事処分や行政処分の対象となり、前歴がある場合には免停や罰金の可能性も現実的に出てきます。
物損事故と人身事故の違いが処分を左右する
交通事故は大きく分けて「物損事故」と「人身事故」があります。物損事故であれば警察に届け出たとしても行政処分の対象にはなりませんが、人身事故扱いになると処分のリスクが出てきます。
診断書が提出されてしまうと、自動的に人身事故として扱われることが多いため、軽微な怪我でも診断書の提出は重要な分岐点となります。
診断書を警察に出さずに保険会社だけに提出できるか
法的には診断書の提出は被害者の自由意思であり、提出しないことも可能です。そのため、被害者が「物損扱いでいい」と判断すれば、診断書は保険会社へのみ提出し、警察には届けないこともあり得ます。
しかし、加害者がそれを主導することは基本的にできません。また、被害者が後から体調悪化などを理由に診断書を提出することも可能で、「その場で出さなかった=安心」とは限らないことに注意しましょう。
免停や前歴の影響とその回避策
すでに前歴がある人が人身事故を起こすと、点数によっては免許停止(免停)や取り消しのリスクが高まります。例えば軽微な事故でも、前歴1回であれば加算点数により30日免停などの処分となる可能性があります。
そうしたリスクを減らすには、
- 事故現場で誠意を持って対応する
- 被害者との話し合いで物損扱いに同意してもらう
- 保険会社を通じてスムーズな対応を心がける
といった対応が必要です。場合によっては、交通事故に詳しい弁護士への相談も有効です。
示談成立と診断書の関係
示談が成立すれば診断書の提出を止めてもらえる可能性もありますが、診断書提出は刑事処分の材料であり、示談とは別のルートです。示談したからといって自動的に診断書が無効になるわけではないため、その点は慎重に考える必要があります。
まとめ:診断書の提出は被害者の自由、しかしリスクはコントロールできない
交通事故後の診断書提出は、加害者がコントロールできるものではなく、被害者の意思と警察の判断によるものです。前歴があるなど不安要素がある場合でも、誠実な対応と早期の示談交渉が処分を軽減する道になります。可能であれば弁護士を介して冷静な対応を取ることをおすすめします。