刑事事件に関わる言葉の中で混同されがちなのが「前科」と「前歴」。一見すると似たような印象を受けますが、実はこの二つには大きな違いがあります。本記事では、それぞれの定義や就職・生活への影響、前歴がある場合に「セーフ」といえるのかどうかを、実例と共にわかりやすく解説します。
「前科」と「前歴」の基本的な違い
「前科」とは、刑事裁判で有罪判決を受け、刑が確定した経歴を指します。一方で「前歴」は、逮捕・取調べを受けたが、不起訴や不起訴相当で終わった、または家庭裁判所に送致されたが保護処分などにとどまったケースなど、有罪判決が確定していない経歴です。
つまり、「前歴」=犯罪者ではないということになりますが、捜査機関の記録には残るため注意が必要です。
前歴があると生活や就職に影響するのか?
法律的には、前歴があるだけで不利益な取り扱いを受けることは原則ありません。たとえば就職時の履歴書に記載する義務もなく、前歴そのものが法的制限の対象にはなりません。
ただし、警察や一部の公務員採用、金融業界などでは、「身辺調査」の一環として警察データにアクセスできる立場から前歴がチェックされる可能性があります。その場合、不採用の判断材料になる可能性も否定できません。
前歴は何年残る?消えることはあるのか
前歴の記録は警察庁の内部データベースに保存されますが、法的な保存期間は明確に定められていません。ただし、重大な犯罪以外は一定期間(たとえば5年、10年など)を過ぎれば実質的に考慮されなくなるケースもあります。
前歴の有無は一般公開されることはなく、自らが申告しない限り第三者が知ることは難しいといえます。
前歴がある人の社会復帰事例
たとえば、20代の男性が高校時代に万引きで補導され前歴がついたものの、その後は一切トラブルを起こさず大学を卒業し、一般企業に就職したケースがあります。このように、前歴があっても再スタートを切ることは十分可能です。
また、ボランティア活動や地域貢献を通じて社会との信頼関係を築いた例も多く、前歴を持つことが必ずしも社会的に不利になるわけではありません。
前歴がバレるのはどんなとき?
通常の企業では、前歴の有無を調査する手段を持っていません。しかし、次のような場合にはバレる可能性があります。
- 公務員や警察関係の職に就くとき
- 海外へのビザ申請時(特にアメリカやカナダなど)
- 金融や機密性の高い業界でバックグラウンドチェックが行われるとき
それ以外では、プライベートで前歴が公になることはまずありません。
まとめ:前歴は「セーフ」だが油断は禁物
前歴は前科とは異なり、法律的には「罪に問われていない」扱いです。就職・進学・結婚など人生の多くの場面において、不利益になることはほとんどありません。しかし、職種や業界によってはチェックされる場合もあるため、自分の状況を客観的に見つめることが重要です。
前歴を気にしすぎて行動を制限するのではなく、前向きに、着実に信頼を積み重ねていくことが、最も健全な社会復帰への道です。