通勤時に通る山間部のトンネルや片側一車線の道路で、多くの車が法定速度を大幅に超える速度で走行している光景を目にする人は少なくありません。にもかかわらず、警察の取り締まりがほとんど行われないという現実に疑問を感じている方も多いでしょう。本記事では、なぜスピード違反が頻発する道路でも取り締まりが強化されないのか、その背景や対策について解説します。
取り締まりが行われにくい道路の特徴
山道や長いトンネル区間は、物理的に取り締まりがしにくいエリアとされています。理由の一つは、設置型オービス(自動速度取締機)の設置にコストがかかる上に、設置基準を満たしにくい点です。
さらに、ネズミ捕り(可搬式速度取締り)は安全な場所に警察官が待機し、停止指導ができるスペースが必要ですが、片側一車線で待避所がない山道やトンネルでは運用が難しいのが実情です。
スピード違反が黙認されているわけではない
一見「放置」されているように見える区間でも、警察は交通事故統計や通報件数に基づいて優先順位を決めて取り締まり対象を選定しています。つまり、他に死亡事故が多発している区間などが優先される傾向にあります。
また、一般道路と違って通行量が比較的安定し、事故リスクが「致死的でない」と判断されている場合は、重点取り締まりエリアから外されることもあります。
実際に事故が起きても変わらない理由
近年は人手不足や予算の都合で、事故が発生しても直ちに対策が講じられないケースが増えています。特に軽傷事故や単独事故で終わってしまうと、対策の優先順位が上がらないこともあります。
たとえば「追突されたが軽傷だった」「対向車と接触したが大事故には至らなかった」などの場合、警察署が本格的に動くには地域住民や自治体からの複数の苦情や要望が必要です。
住民としてできる要望の伝え方
地域住民として危険性を訴えたい場合は、警察庁または都道府県警察の意見箱や、自治体の道路交通安全課へ連絡することが有効です。個別の声よりも、町内会や通勤者の複数人で意見を出す方が重く受け止められる傾向があります。
また、事故のあった地点や時間帯、通行量の多さ、近隣に学校や施設があるといった具体的情報を添えることで、説得力のある要望になります。
交通違反の監視は今後どう変わる?
最近ではAIカメラや簡易オービスなど、人手を使わずに交通違反を検知できる技術の導入も進んでいます。将来的には、コストが下がることで山道や地方の道路にも導入される可能性があります。
とはいえ、今のところ多くの道路では通報や統計的な事故リスクをもとに設置が検討されるため、現場の声を届けることが改善の第一歩となります。
まとめ:放置ではなく、優先順位の問題
スピード違反が横行しているにもかかわらず、取り締まりがなされていない道路には、物理的・人的・予算的な制約があります。決して警察が意図的に「放置」しているわけではなく、リスク評価と対応の優先順位が理由です。
それでも事故や危険が実際に起きているなら、住民の声やデータを集めて、行政や警察に働きかけることが最も効果的な手段です。