SNSや日常生活において、ふとした一言がトラブルに発展することがあります。特に「侮辱罪」や「名誉毀損」といった刑法上の問題は、誰もが知らずに関わってしまう可能性があります。この記事では、これらの違いと実際の適用事例を踏まえ、どこまでがセーフでどこからがアウトなのかを解説します。
侮辱罪と名誉毀損罪の法的な違い
名誉毀損罪は、公共性のある場で「特定の事実」を述べ、その内容が真実であっても相手の社会的評価を下げる場合に成立する可能性があります。一方で、侮辱罪は、事実の有無に関係なく、相手の社会的評価を抽象的な表現で貶めた場合に成立します。
たとえば、「あの人は前科者だ」と言えば名誉毀損に該当する可能性がありますが、「あの人は使えない」「気持ち悪い」などと主観的に非難するだけであれば侮辱罪に該当することがあります。
一対一の会話で侮辱罪は成立するのか
一般に、侮辱罪の成立には「不特定または多数人が認識する可能性」が必要とされます。つまり、密室や一対一での発言は通常、侮辱罪にはなりにくいとされています。
しかし例外として、「発言が録音・録画され拡散された」「当事者が他者に言いふらした結果、社会的評価が下がった」といったケースでは、侮辱行為が公知になったと見なされる可能性があり、侮辱罪の構成要件に該当する可能性も否定できません。
発言後に当人が「言いふらした」場合はどうなる?
たとえば「気持ち悪い」と言われた本人がその場で騒いで他人に聞かせてしまった場合、「発言の拡散に発言者が関与していない」ため、侮辱罪の成立には慎重な判断が必要です。
判例上は、発言の拡散が発言者によるものかどうかが重要視されます。そのため、「相手が勝手に騒いで公にした」だけでは、発言者が侮辱罪に問われる可能性は低いと考えられます。
「精神的苦痛」と刑事責任は別問題
刑事責任と精神的損害賠償は異なる法的分野です。たとえ一対一の場面で発言が侮辱罪に該当しなくても、発言により精神的苦痛を受けたと感じた場合には、民事訴訟として慰謝料請求が可能になるケースもあります。
つまり、「刑事責任=侮辱罪」にはならないが、「民事責任=損害賠償請求」は別途成立しうるという点には注意が必要です。
日常の悪口や陰口がすぐに侮辱罪になるわけではない
「あの客マジで使えない」などと、職場や友人間で不満を口にする場面はよくあります。こうした発言が全て侮辱罪になるわけではありません。
あくまで、発言の「内容」「場所」「人数」「社会的影響」など総合的に判断されます。公の場やSNSでの発言はリスクが高いため、発信には配慮が必要です。
まとめ:日常の発言も法的責任に発展する可能性がある
侮辱罪や名誉毀損罪は、ちょっとした発言や投稿が対象になることもあります。ただし、一対一での発言や、その場限りの発言がすぐに罪に問われるわけではありません。
相手を不当に貶めない、主観的な批判であっても発言場所や文脈を慎重に選ぶことが、自分自身を守るポイントとなります。トラブルを避けるためには、発言前に「この言葉は相手を傷つけないか」を一度立ち止まって考える習慣が大切です。