交通事故において、明らかに相手(歩行者)に大きな過失がある場合でも、自動車側の責任がゼロになるとは限りません。特に人身事故で相手が重傷を負った場合、運転者の法的・行政的な責任が問われる可能性があります。本記事では、歩行者の信号無視や飛び出しといったケースに焦点を当て、事故後の加点・罰金・裁判の可能性について解説します。
交通事故の過失割合と「過失相殺」の原則
事故の責任割合は、一般的に「過失相殺」の考え方で判断されます。これは、被害者側にも一定の落ち度がある場合、その割合に応じて賠償責任が減免されるというものです。
たとえば歩行者が赤信号で飛び出した場合、歩行者の過失は非常に高くなる可能性があります。しかし、それでも運転者は道路交通法上の「安全運転義務違反」を問われる余地があります。
点数や罰金はどのように決まるのか
人身事故が発生すると、原則として運転者には行政処分(違反点数の加点)が科されます。加点の有無や点数の重さは、次のような点により判断されます。
- 事故の状況(信号、横断歩道の有無、見通しの良さなど)
- 運転者が安全確認をしていたか
- 被害者の行動に予見可能性があったか
これらにより、点数加算や反則金、場合によっては刑事罰にまで発展することがあります。
刑事責任や裁判になるケース
人身事故が発生した場合、警察は捜査を行い、「過失運転致傷罪」などの刑事事件として検討される可能性があります。相手に重傷があった場合は、略式起訴による罰金処分や正式裁判に発展することもあります。
ただし、事故の証拠やドライブレコーダーの映像などで、歩行者に過失があり、運転者に注意義務違反がなかったと判断されれば、不起訴処分となることもあります。
実際の事例から見る対応の違い
例1:横断歩道の赤信号を無視して飛び出した歩行者と接触。ドライブレコーダーにより運転者の注意義務違反がなかったと認定され、点数加算も不起訴。
例2:歩行者の信号無視だったが、スピード超過があり、安全確認が不十分とされ、3点の加点と罰金30万円が科された。
このように、事故の詳細な状況によって処分内容は大きく異なります。
事故直後にすべき対応と証拠の重要性
人身事故が発生した場合には、まず警察への通報・救護が最優先です。そして次のような証拠の確保が、後の処分の軽減に直結します。
- ドライブレコーダーの映像
- 事故現場の写真
- 目撃者の証言
証拠が明確に「注意義務を尽くしていた」ことを示せる場合、加点や刑事処分を回避できる可能性があります。
まとめ:過失が大きい相手でも責任ゼロにはならない
歩行者に明らかな過失がある場合でも、運転者が完全に免責されるとは限りません。特に人身事故では、行政処分・刑事処分・民事賠償の三方面から対応を迫られるケースが多いため、事故発生時の証拠確保と、法的な知識の習得が非常に重要です。
必要であれば交通事故に詳しい弁護士に相談し、適切な対応を取ることが、将来的なリスクを減らす第一歩となります。