「万引き」と「窃盗」の違いとは?法律的な位置づけと処理の実態をわかりやすく解説

「万引き」と「窃盗」は同じ意味のように思える言葉ですが、法律上ではどのように扱われ、なぜ呼び方が異なるのでしょうか。この記事では、刑法上の構成要件から社会的な運用まで、両者の違いを解説します。

「窃盗」とは?刑法の基本的な定義

刑法235条に定められる「窃盗罪」は、以下の構成要件を満たすことで成立します。

  • ① 他人の財物(自己の所有物ではないこと)
  • ② 窃取(不法に持ち出すこと)
  • ③ 故意(偶然ではなく意図があること)
  • ④ 不法領得の意思(自己の利益として得ようとする意思)

たとえば、コンビニで商品をカバンに入れてそのまま出た場合、これらの要件がすべて当てはまれば「窃盗罪」として処理されます。

「万引き」は窃盗罪の一類型

「万引き」は、小売店などでの窃盗行為を指す俗称です。法律上は「窃盗罪」であり、「万引き罪」という罪名は存在しません。言い換えれば、万引きは“どこで”“どのように”盗んだかを説明するための通称に過ぎません。

刑事手続き上も、万引き行為であっても立派な窃盗罪として扱われ、前科となる可能性もあります。

なぜ「万引き」という言葉が使われるのか

社会的・報道的に「万引き」という言葉が使われるのは、加害者が未成年・高齢者・初犯の場合が多く、印象を和らげる意図があるとされています。

また、刑事処分の選択肢として「不起訴」「略式起訴」「保護観察」などが想定される軽微な事案では、俗称として使いやすい「万引き」が報道等で頻繁に用いられます。

司法現場での扱いと処分の違い

「万引き=軽い罪」と思われがちですが、実際には繰り返し行えば実刑判決もあり得る深刻な犯罪です。

初犯であれば不起訴や略式命令(罰金)で済むこともありますが、再犯・計画性・店舗側の被害額などによって、正式裁判に進むケースも少なくありません

実例で見る:高齢者の万引きと刑罰

たとえば80代の高齢者が小型スーパーで商品を万引きし、再犯であった場合、家庭裁判所での調査や検察の起訴意見により、執行猶予付きの懲役刑が言い渡されることがあります。

特に最近では、認知症や孤独が関係している場合も多く、福祉的対応と刑事責任のバランスが問われています。

まとめ:言葉の違いではなく、法的実態に注意を

「万引き」という言葉は日常的によく使われますが、法律的には「窃盗罪」と何ら変わりません。行為の重大性は同じであり、決して軽視できるものではないのです。刑法上の理解と社会的な文脈を踏まえ、正しい知識を持つことが重要です。

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