有名スポーツ選手が企業とスポンサー契約を結ぶことで、その企業の株価が上昇するケースは近年増えています。しかし、選手本人がその企業の株式を保有していた場合、法的に問題になる可能性はあるのでしょうか?インサイダー取引や金融商品取引法の観点から整理しながら、具体的に解説していきます。
■ インサイダー取引とは何か?
インサイダー取引は、「上場企業の重要事実を知り得る立場にある者」が、その情報が公表される前に株式等の売買を行う行為を指します。日本では金融商品取引法で明確に禁止されています。
具体例としては、企業の合併、新製品の発表、業績の上方修正などが未公開である段階で、それを知って株式を買い増す行為などが該当します。
■ スポンサー契約は「重要事実」に該当する?
スポーツ選手とのスポンサー契約が株価に影響を与えるほど大きな出来事であれば、金融庁や証券取引等監視委員会が「重要事実」と見なす可能性はあります。
しかし、多くのケースでは、スポンサー契約の内容は一般公開され、情報開示が適切になされていれば、「未公開情報」ではないため、法令違反にはなりません。
■ 契約期間中に売買しなければ違反にならない?
質問のように「契約期間中に株式売買を一切行っていない」のであれば、インサイダー取引とはみなされないのが一般的です。重要なのは、「契約により株価が上がることを見越して、事前に取引したかどうか」です。
つまり、スポンサー契約自体が「株価を操作する目的」で締結され、その前後に売買を行っていれば疑われる可能性がありますが、保有していただけで売買の事実がないなら、基本的に違法ではありません。
■ 有名人と企業の株価変動:実例と法的注意点
過去には、有名人がある企業のSNSで商品を紹介した結果、株価が急騰し、後にその人物が株を売却していたことが報道され、調査対象になった事例もあります。
このような事例では「事前に売却目的で情報発信したのでは?」と疑われ、インサイダー取引や風説の流布に該当するかが問われます。
■ 金融商品取引法と表現の自由の境界線
スポーツ選手やインフルエンサーが自らの影響力を使って企業と提携すること自体は違法ではありません。ただし、その過程で未公開の情報を利用し、経済的利益を得るために株式を操作するような行為があると、金融商品取引法の規制対象になる可能性があります。
そのため、事前に法律の専門家と相談することが安全です。
まとめ
スポンサー契約を結んだことによって株価が上昇し、その間に株式を売買しなかった場合、基本的には法律違反とはなりません。重要なのは、「未公開情報を利用して取引したかどうか」です。株式を保有していたとしても、契約と直接的な取引がなければインサイダー取引には該当しませんが、グレーな領域もあるため、慎重な行動と専門家への相談が推奨されます。