不倫問題といえば肉体関係が焦点になるイメージがありますが、実は法律上では「肉体関係の有無」だけで判断されるわけではありません。特に既婚者との関係でラブホテルを利用した場合、たとえ性行為がなかったとしても慰謝料請求や法的責任を問われるリスクがあるのです。この記事では、その根拠と実例を紹介しながら注意点を解説します。
日本の不貞行為の定義と裁判所の判断基準
日本の民法では、不貞行為(=不倫)を理由に離婚や慰謝料請求が認められるケースがあります。不貞行為とは「配偶者以外と自由意思で性的関係を持つこと」を指します。
しかし、民法上の不法行為(民法709条)による損害賠償請求では、実際に性行為があったことを証明できなくても、“社会通念上、性的関係があったと推認される状況”であれば、不貞行為があったとみなされることがあります。
ラブホテル利用が重要なポイントになる理由
仮に肉体関係がなかったとしても、既婚者と2人きりでラブホテルに出入りするという事実は、客観的に見て「男女関係があった」と推定される可能性が極めて高くなります。
判例でも、「ラブホテルを利用していたこと自体が不貞行為の立証につながる」とされた事例は複数存在します。特に、第三者(配偶者)が写真や動画などの証拠を持っていた場合、言い逃れは困難です。
肉体関係がないことを証明できるか
裁判では「肉体関係がなかった」ことを主張しても、証明責任は被告側にあります。しかし、性行為がなかったことを裏付ける客観的な証拠(監視カメラ映像、通話履歴、録音など)がない限り、裁判所はラブホテルという環境を重視し、「通常の飲み友達」としての利用とはみなさない傾向にあります。
つまり、肉体関係がなくても“疑われるような行動”を取った時点でリスクが生まれるということです。
慰謝料の相場と支払いの可否
不倫慰謝料の相場は30万円~300万円と幅があります。仮に実際に性行為がなかったとしても、ラブホテルでの密会や夜間の接触頻度、配偶者の精神的苦痛の大きさなどを根拠に、数十万円の請求が認められるケースもあります。
また、話し合いの段階で示談として慰謝料の支払いを求められ、裁判に至らずとも支払う事例も少なくありません。
こうしたリスクを避けるためのポイント
- 既婚者と2人きりで会う際は、第三者の目があるカフェや飲食店を選ぶ
- 夜間の密会は避ける
- LINEやメッセージに誤解を招く表現を使わない
- 万が一の場合を想定して記録を残しておく
このように、リスクマネジメントを意識することで、後から不当な請求を受ける可能性を下げることができます。
まとめ:無実でも「誤解される行動」に要注意
肉体関係がなかったとしても、状況証拠から不貞を推定されることは現実にあり得ます。とくにラブホテルのような場所での接触は、第三者から見れば“不倫関係”と判断される可能性が高く、法的トラブルのきっかけとなります。
信頼関係のもとでの人付き合いであっても、既婚者との行動には慎重さが求められます。感情よりも、社会的・法的なリスク管理を優先することが、今後のトラブル回避につながるでしょう。