高額商品を生前に契約し、支払いが始まる直前に本人が亡くなった場合、その支払い義務はどうなるのでしょうか?特にカツラや補聴器、美容機器のような“高額消費財”の分割購入契約において、遺族の負担が大きくなることも。本記事では、相続と債務の関係を法的に整理しながら、支払い負担を軽減するための選択肢について解説します。
亡くなった人の債務は相続の対象になる
被相続人(故人)が生前に契約していた商品の未払い分は、「遺産の一部」として扱われ、相続人がそれを引き継ぐことになります。これはプラスの財産(預金や不動産など)だけでなく、マイナスの財産(借金や分割購入残債など)も同様です。
したがって、相続放棄をしなかった場合、遺族は基本的にその債務を引き継ぐことになり、支払い義務が発生します。
すでに受け取った商品の返品や契約解除は難しい
今回のように、商品(カツラ)がすでに納品され、使用もしていた場合、クーリングオフは適用できません。原則として、契約内容通り支払う必要があります。
返品による支払い免除は「未使用」「初期不良」など特別な事情がない限り認められないため、現実的には履行義務が継続していると考えるべきでしょう。
支払い負担を軽減するための交渉はできるか
販売業者に対して「一括払いに切り替えるから値引きをしてほしい」といった交渉は、契約内容次第では可能性がありますが、すでに「NO」と明言された場合、再交渉の余地は小さいと見られます。
ただし、遺族の生活状況や支払い能力に応じて「分割回数の変更」や「支払猶予」などの交渉を申し出ることで、少しでも精神的・経済的な負担を和らげることは可能かもしれません。
法的に支払いを回避できる可能性
どうしても支払いが難しい場合、「相続放棄」を検討する手段もあります。相続放棄とは、遺産(プラスもマイナスも)を一切引き継がない選択で、家庭裁判所に申述して受理される必要があります。
ただし、相続放棄の申述は原則として「相続開始(死亡)から3か月以内」に行わなければなりません。この期限を過ぎると原則として全債務を引き継いだことになってしまいます。
実例:高額医療器具の支払いと遺族の対応
Bさんの父は、医療器具を分割購入し、3回目の支払い前に死亡。Bさんは葬儀後すぐに家庭裁判所に相続放棄を申し立てた結果、債務も回避することができました。
一方で、Cさんは父の遺品を整理し、預金を使った後に請求が来て相続放棄ができなくなり、債務を引き継ぐことになりました。こうしたケースからも、「知らないうちに相続したことになってしまう」リスクには注意が必要です。
まとめ
親が生前に契約した商品の残債は、基本的に遺族が支払う義務があります。ただし、相続放棄や分割条件の見直しなど、救済の選択肢もあります。
放棄や交渉を検討する場合は、早めの判断と行動が非常に重要です。必要に応じて、消費生活センターや弁護士などの専門機関に相談することで、より良い解決策が見つかるかもしれません。