不倫慰謝料の交渉では、金額の妥当性だけでなく、相手の対応や戦略にも注意が必要です。この記事では、慰謝料請求額を意図的に高く設定することで、相手にかかる弁護士費用を増やす戦術について、法律的・実務的な観点から解説します。
不倫慰謝料の相場と請求可能な金額
一般的な不倫慰謝料の相場は、婚姻継続中であれば50万〜150万円、別居・離婚に至った場合は200万〜300万円とされています。
そのため、実態に見合わない高額請求(例:500万円)は、相手に強い心理的圧力をかける可能性はありますが、最終的に裁判や交渉で減額される可能性が高い点には留意が必要です。
相手弁護士の費用構造と交渉への影響
相手側が弁護士を立てている場合、成功報酬型で獲得した減額分の15〜20%を支払う契約が一般的です。つまり、こちらの請求金額が大きければ大きいほど、相手弁護士が得る報酬も増える仕組みです。
一見すると、「高額請求を続ければ相手に負担がかかる」と思われがちですが、弁護士にとってはむしろ報酬が増えるインセンティブとなり、長期化も厭わない展開になる可能性があります。
請求金額を釣り上げるリスクとは?
請求金額を意図的に高く設定することは法的には可能ですが、以下のようなデメリットがあります。
- 不誠実な印象を与え、示談成立の可能性が低下
- 裁判になった場合に心証が悪くなり不利になる可能性
- 交渉の長期化により自身も精神的・金銭的負担が増える
特に、金額に根拠がない場合は「名誉毀損的請求」と判断されるリスクもゼロではありません。
慰謝料増額が認められる具体的な条件
請求額を正当化するには、以下のような要素が必要です。
- 不倫期間が長期にわたり継続的だった
- 不貞行為の頻度や内容が悪質だった
- 夫婦関係や家庭に著しい悪影響が出た
- 相手が反省の意思を全く示していない
こうした事情を具体的に主張できる場合、請求金額を高く設定しても現実味が増します。逆に、交渉の材料が乏しい状態で500万円を請求するのは、戦略的に弱い可能性があります。
戦略的に交渉を有利に進めるには
高額請求が必ずしも有利とは限りません。効果的な交渉をするには、
- 感情論ではなく、法的根拠をもって請求する
- 相手の出方に応じて柔軟な対応を心がける
- 弁護士に相談し、第三者的な視点を得る
特に示談での解決を目指すなら、請求額を「交渉の余地がある金額」として設定するのが現実的です。例えば、300万円から開始して200万円程度で合意するなど。
まとめ:高額請求で相手を追い詰める戦術の限界
慰謝料請求額を吊り上げることで相手にプレッシャーを与えることは一つの戦術ですが、それが必ずしも有利に働くとは限りません。むしろ、交渉を長期化させてしまい、結果的に自身の負担が増す可能性もあります。
冷静かつ法的な根拠に基づいた交渉こそが、結果的に最も納得感のある解決へとつながる鍵になります。感情だけに任せず、戦略的なアプローチで進めましょう。