交通事故における「過失割合」は、事故の責任を当事者間でどれだけ分け合うべきかを示す重要な要素です。特に、信号のある交差点で歩行者が赤信号で横断した場合に発生した事故では、「歩行者の過失が7割前後」とされることが多く、この判断に疑問の声が上がることも少なくありません。
歩行者が赤信号を無視した場合の過失割合の原則
基本的に、交通事故の過失割合は、過去の裁判例や判例タイムズの基準に沿って決定されます。歩行者が赤信号を無視して横断歩道に進入した場合、歩行者側に70~80%の過失が認定されることが一般的です。
これは「信号無視」という重大な交通ルール違反があるためで、たとえ事故の被害者であっても、自身のルール違反が大きな要因とみなされるのです。
車両側にも残る責任とは?
一方で、車両側も「交通弱者保護の原則」から完全な免責とはなりません。特に夜間や視界が悪い状況、周辺に学校や住宅街がある場所では、「徐行義務」や「注意義務」を怠ったと見なされ、20~30%程度の過失が認定されることがあります。
また、ドライブレコーダーや防犯カメラの映像があれば、運転者の速度やブレーキの有無などが詳細に検証され、過失割合の修正要因となることもあります。
本当に歩行者が悪い?感情と現実のズレ
「車は鉄の塊で、人は生身」だからこそ、たとえ信号無視であっても「轢いた側が悪いのでは?」という感情的な意見は根強く存在します。しかし、法律上は「どちらが交通ルールを守っていたか」が重視されるため、感情と法理論とのギャップが生じやすいのです。
たとえば、小学生が赤信号を認識せずに飛び出したケースなどでは、年齢や判断能力が考慮され、過失割合が修正されることもあります。
過失割合の見直しが求められる場面
近年では、AIによる自動運転や、自転車や電動キックボードなどの交通参加が増え、従来の過失割合ルールが現状に合わなくなってきているとの指摘もあります。また、「注意していても避けられない事故」と「注意していれば防げた事故」とでは、責任の重みも変わるはずです。
こうした流れの中で、過失割合の柔軟な見直しや、より詳細な判断基準の整備が求められています。
交通事故に遭ったらどうすべきか?
事故に巻き込まれた場合、まずは110番通報と119番での救急要請を優先し、その後は冷静に証拠を記録することが重要です。歩行者であっても、信号機の状況、事故時の位置、周囲の証言、監視カメラの映像など、後の過失判断に役立つ情報を可能な限り残しましょう。
保険会社の判断や警察の調書に納得できない場合は、弁護士に相談し、民事上の交渉や訴訟も視野に入れることが可能です。
まとめ:過失割合は現実的判断だが課題も残る
歩行者が赤信号を無視した場合、過失割合として7割が認定されるのは、現在の法制度と判例に基づいた現実的な判断です。しかし、それが「本当に公平か」「社会的に妥当か」という視点では、見直しの余地もあります。
交通事故の責任をより正確かつ柔軟に判断するためには、法の運用だけでなく、社会全体での議論とアップデートが求められているのかもしれません。