なぜ自賠責保険の上限は3000万円なのか?制度の目的と限界を徹底解説

自動車を所有するすべての人が加入を義務づけられている自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)。その補償上限は死亡事故の場合でも「最大3000万円」と定められています。この金額に疑問を感じた方も多いのではないでしょうか?なぜ金額がもっと高く設定されていないのか、誰のための制度なのか、本記事で詳しく解説します。

自賠責保険の本来の目的とは?

自賠責保険は、被害者救済を目的に国が制度化した最低限の補償を行う保険です。加害者に資力がない場合でも、被害者が最低限の補償を受け取れるように設計されています。

つまり、「被害者がまったく補償を受けられない最悪の事態を防ぐ」ことが主目的であり、全面的な賠償を担保する保険ではありません。そのため補償内容も以下のように限定されています。

  • 死亡事故:最大3000万円
  • 後遺障害:最大4000万円(等級による)
  • 傷害:最大120万円

補償額が引き上げられない理由とは

3000万円という上限は2002年に引き上げられたもので、それ以前は2000万円でした。以降、制度の見直しはあるものの、さらなる引き上げには以下の課題があります。

  • 保険料負担が国民全体に及ぶため、引き上げは慎重
  • 任意保険がある前提で制度設計されている
  • 保険財政の健全性維持が優先されている

自賠責は全ドライバーに課される義務保険です。補償額を大幅に上げると、年間保険料が数万円単位で上がる可能性があり、社会的負担が増大します。

任意保険との役割分担

自賠責保険は「最低限の補償」を担い、残りの部分は「任意保険」でカバーするという構造が一般的です。たとえば。

  • 死亡事故で遺族が1億円の損害賠償請求をした場合
  • 自賠責で3000万円補填 → 残り7000万円は任意保険の対人賠償保険でカバー

このように、任意保険との組み合わせによって、被害者が実際に受け取れる補償額はケースによって大きく異なります。

資力のない加害者や任意保険未加入者の場合

もっとも深刻な問題は、「任意保険未加入で資産もない加害者」です。この場合、自賠責保険のみが唯一の補償となり、最大3000万円を超える部分は事実上回収不能になります。

そのため、遺族や被害者は深刻な損失を被ることになり、制度の限界が露呈します。ただし、こうしたケースのために「政府保障事業」などの制度もありますが、対応には時間がかかる上、すべてを補償できるわけではありません。

保険会社の利益が補償額を抑えている?

一部では「保険会社のロビー活動によって補償額が抑えられている」との声もありますが、自賠責保険に関しては制度設計自体が国主導で行われており、保険料率や支払基準も国が決定しています。

また、自賠責保険の収支は基本的に公開されており、保険会社の利益が直接関与しているとは考えにくい構造です。むしろ、制度の持続性や保険料の公平性が重視されていると言えます。

まとめ:自賠責の限界を補うには「任意保険の加入」が重要

自賠責保険は、最低限の被害者救済を目的とした制度であり、全面的な損害賠償を担うものではありません。死亡事故で3000万円の上限があるのもそのためです。

資力のない加害者や任意保険未加入者によるリスクを避けるためにも、自分自身が任意保険にしっかり加入することが最大の防衛策となります。万一に備え、補償内容を今一度見直しておくことが大切です。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール