駅の券売機などで前の人がICカードを忘れていった場面、善意で拾って渡したものの、あとになって本当に正しい人に渡したのか不安になる──そんな経験がある方もいるかもしれません。この記事では、そのような状況での法的な問題や正しい対応方法について、できるだけ丁寧に解説します。
ICカードなどを拾って渡したときの行為は「占有離脱物横領」には当たる?
「占有離脱物横領罪(刑法254条)」は、落とし物や忘れ物を自分のものにしたり、勝手に処分したりすることで成立する犯罪です。ただし、善意で持ち主に渡そうとした行為や、すぐ近くにいた人に確認の上で渡した場合、それが犯罪として問われる可能性は極めて低いとされています。
たとえば駅の券売機で前の人がICカードを抜き忘れた場合、それに気づいて「お忘れですよ」と声をかけて返した行為は、法的には問題ないのが一般的です。もしも相手が違っていたとしても、故意性がなく過失であれば犯罪とまではなりません。
善意での行動でも注意点はある
落とし物や忘れ物を見つけたときの基本ルールとしては、駅員や施設のスタッフなど「管理者」へ届けるのが原則です。これは遺失物法という法律でも定められています。
つまり、迷ったときは「誰かに渡す」よりも「駅員に届ける」が正解です。今回のように渡してしまったあとで不安になった場合も、状況を駅員に報告しておくことで、もし後日トラブルが起きたときにも説明がしやすくなります。
万が一違う人に渡してしまっていた場合はどうなる?
違う人に渡してしまっていたとしても、以下の点が確認されます。
- 故意に盗もうとした意図がない(=善意で行った)
- その場で声をかけ確認している
- できる範囲で正しい対応を取っている
これらが当てはまるなら、法的責任を問われる可能性は極めて低く、警察沙汰になることはほとんどありません。ただし、渡した相手がそのカードを悪用するようなことがあった場合に備え、やはり駅側への報告はしておいた方が安心です。
今からでもできる対応とは?
もしまだ時間が経っていないなら、最寄りの駅や現場の鉄道会社の窓口に以下のように説明しましょう。
- いつ・どこで・どんなICカードを拾ったか
- どのような人物に渡したか(服装・特徴など)
- 「声をかけて確認したが、一瞬目を離したため不安が残っている」といった事情
駅の記録や監視カメラ、カード利用の記録などで万一問題があった際にも、あなたが善意で行動していたことが立証されやすくなります。
日常でありがちな善意とリスクのバランス
今回のようなケースは、誰にでも起こり得る身近なトラブルです。善意で行動したつもりでも、不安が残ることはあります。こうしたときは、法律を知っておくことと、できるだけ「第三者(駅員や警備員など)」を通じて行動するのが理想的です。
また、本人確認が難しい状況では、その場で声をかけて返すより、落とし物として預ける方が無難です。
まとめ|善意の行動を責められることはほぼないが、次回は慎重に
ICカードなどを落とした方に返そうとした善意の行動は、たとえ結果的に違う人に渡ってしまったとしても、基本的に法的責任が問われることはほとんどありません。しかし、不安が残る場合は、できるだけ早く駅や鉄道会社に報告しておきましょう。次回からは「拾ったら職員に渡す」という行動を心がけることで、より安心な対応ができます。