不可争力を有する行政処分と行政不服審査制度の関係性を徹底解説

行政処分には「不可争力」が生じることがありますが、この不可争力がある処分に対しても、行政不服審査制度によって取消が可能かどうかという点は、行政法の重要な論点の一つです。今回は、不可争力の意味と行政不服審査制度との関係について解説しながら、実務上の扱いも紹介していきます。

不可争力とは何か?その法律的意味

不可争力とは、行政処分に対して法律上の不服申立て期間が経過し、それ以降は争えなくなる状態を指します。例えば、行政不服審査法に基づく審査請求は、原則として処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内(行政不服審査法第18条)に行う必要があります。

この期間を経過すると、原則としてその処分に対しては審査請求も訴訟もできなくなります。これが「不可争力」が確定した状態です。

不可争力がある処分への審査請求は可能か?

原則として、不可争力が生じた行政処分は、行政不服審査制度により取消すことはできません。これは、法的安定性を維持し、行政の確定的効果を保障するためです。しかし例外的に、以下のようなケースでは再審的手続が取られることがあります。

たとえば、処分に重大な瑕疵があった場合(例:明白な事実誤認や法律の適用ミス)、職権による処分の取消(行政手続法第14条など)を行うことが可能な場合があります。ただしこれはあくまで行政庁の裁量で行われるもので、請求人が一方的に求められるものではありません。

再調査や再審査制度との違いに注意

不可争力が確定した後も、制度として再審査や再調査を認める法的仕組みが設けられている場合もあります。これは医療行政や税務行政など一部の専門領域で特に見られます。

例えば、税務に関しては「更正の請求」など、一定の期間内であれば手続きが可能な仕組みが整備されています。こうした制度があるかどうかは、処分の根拠法令によって異なるため、個別の確認が必要です。

不可争力確定後に取り得る他の法的対応

不可争力がある処分であっても、行政庁が任意に再検討する「再考申出」や「要望書」など、非公式な手段を通じて見直しが行われる可能性もゼロではありません。特に人道的配慮や、社会的な大義名分がある場合には行政庁が柔軟に対応することもあります。

また、処分によって具体的に損害を被った場合には、国家賠償請求(国家賠償法第1条)や不作為の違法確認訴訟等、別の法的アプローチを検討する余地もあります。

実例:不可争力の壁を乗り越えたケース

ある建築業者が、行政庁による営業停止処分を受けました。処分内容に納得できなかったが、申立て期間を過ぎてしまい不可争力が確定。しかしその後、当該処分が違法な証拠が見つかり、行政庁が職権で処分を取消すという対応をとりました。

このように、形式上は不可争力がある処分であっても、内容次第では例外的対応がなされることがあります。

まとめ:不可争力は原則として取消不可、だが例外の余地も

不可争力が確定した行政処分については、原則として行政不服審査制度による取消はできません。しかし、重大な瑕疵がある場合や法令上の例外制度がある場合には、再審査や職権取消といった別の対応がなされることがあります。したがって、不可争力がある処分であっても諦めず、まずは根拠法令や事案の特性に応じた対応を検討してみましょう。

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