成年後見人による財産の不正使用は社会的に深刻な問題です。家族がいない被後見人の場合、不正が見逃されるのではと不安に思う方も多いでしょう。本記事では、成年後見制度におけるチェック体制と、不正を未然に防ぐための仕組み、そして万一発覚するきっかけについて解説します。
成年後見制度の概要と後見人の役割
成年後見制度は、認知症や障害などで判断能力が不十分な方のために、財産管理や生活支援を行う制度です。家庭裁判所が後見人を選任し、後見人には厳格な職務義務が課せられます。
後見人には弁護士や司法書士、時には家族が就くこともあります。業務は広範で、銀行口座の管理から不動産売買、入院費の支払いまで多岐にわたります。
後見人による不正はなぜ起きるのか
多くの後見人は真摯に職務を果たしていますが、中には不正に被後見人の財産を引き出したり、管理記録を虚偽報告する例も報告されています。
特に家族や知人がいない場合、外部の目が届きにくく、不正が長期間発覚しないことも懸念されています。2024年にも弁護士が300万円を着服したケースが報道されました。
監督制度:家庭裁判所のチェック体制
しかし制度上、家庭裁判所が後見人の業務内容を定期的に監督しており、年1回の収支報告書提出が義務付けられています。
また、不正が疑われる場合には、裁判所が会計帳簿や領収書の提出を求め、厳しく調査を行います。明らかに説明不能な支出がある場合には、後見人の交代や懲戒処分、刑事告発が行われることもあります。
家族がいなくても発覚するきっかけとは
では家族がいない場合、どうやって不正が発覚するのでしょうか?以下のようなケースが実際に報告されています。
- 介護施設や医療機関の職員が支払い遅延や不審な金銭管理に気づき通報
- 自治体の福祉課職員が定期訪問時に異常を察知
- 後見人が交代した際、新たな後見人が不正を発見
このように、複数の公的・民間機関が連携しているため、家族がいなくても第三者が気づくことは十分にあり得ます。
不正防止のための今後の対策と動き
近年では、弁護士や司法書士に限らず、複数の専門家で構成される後見法人の活用が推奨されています。
また、裁判所も監督強化の一環として、成年後見監督人制度を積極的に活用しており、後見人の業務をさらに第三者がチェックする体制が整えられつつあります。
まとめ:見えないところでも監視の目はある
成年後見制度は信頼を基盤とした制度ですが、信頼だけに頼らないチェック体制が段階的に整備されています。家族がいなくても、施設・自治体・裁判所などのネットワークにより不正は発覚しうるのです。
被後見人の権利と財産を守るため、制度に対する理解と社会全体での監視意識が今後さらに重要になります。